美しくて、切なくて、言葉にしたら消えてしまいそう
宮沢賢治作品の中で、1番好きだと言ってもいいかもしれません。これぞ、宮沢賢治ワールド! という作品かなと思います。大人になってからも、時々読み返していましたが、ここでレビューを見て、また読みたくなって手に取りました。親友の死出の旅に、わけもわからぬまま同行することとなった少年。その途中で出会う、同じく死出の旅へ赴くさまざまな人々。その誰もが、死に直面して感じる思いを、この先も生きていく少年に押し付けるのではなく、何気なく、まさしくたまたま列車に乗り合わせた者同士の世間話のようにさりげなく語りかけます。まさか、死出の旅とは思ってもいない少年は不可思議な気持ちでそれを受け止め、最後の最後まで現実に起きている悲劇に気付きません。だからこそ、読み手である私も、読んでいる間中、感じていた美しくて、切ない気持ちをどう言葉にしていいのか、わからなくなってしまうのだと思います。どれほど、言葉を尽くしても、あの感覚は表現しきれません。ぜひ、童話だと侮らずに、大人になってからも読み返していただきたい作品です。そして、読み終わって心の中に残った何かを、じっくり味わってください。無理に言葉にしようとせず、ただ自分の中で静かに・・・
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