蜘蛛の糸のあらすじ・作品解説
「蜘蛛の糸」は芥川龍之介が初めて手掛けた児童文学の短編小説であり、1918年に鈴木三重吉によって創刊された児童向け文芸雑誌「赤い鳥」創刊号に掲載された。カンダタは極悪非道の大泥棒で、今は地獄の底で毎日もがき苦しんでいた。ある日、ハスの池の周りを散歩中のお釈迦様が、カンダタが今まで一回だけ小さな蜘蛛を踏み殺さずに助けたことを思い出し、カンダタを助けるために池に細く輝く糸を垂らす。これを見つけたカンダタは、喜び勇んで細い糸に飛びつく。 しかし、ふと下を見ると無数の罪人が上をめがけてのぼってきていた。このままでは、重みで細い糸が切れてしまう。そう考えたカンダタは、「この糸は俺のものだ。下りろ!」と叫んだ。その途端、細い糸はプツリと切れてカンダタはまた暗くて深い地獄の底へと沈んでいった。一連のことを見ていたお釈迦様は、自分のことだけしか考えないカンダタのことを浅ましく思ったのか、悲しい顔で立ち去って行ってしまった。
蜘蛛の糸の評価
蜘蛛の糸の感想
救いの糸を、我欲す
神の嘆き、亡者の愚かある日の事でございます。御釈迦様は極楽の蓮池のふちを、独りでぶらぶら御歩きになっていらっしゃいました。この有名な一文から始まる小説「蜘蛛の糸」の物語を知らない日本人はまずいない、既に芥川龍之介の作品は著作権が消滅しているのでこの物語も青空文庫にて無料で読むことが出来る。ここであらすじを書かなくとも知っていることでしょうけれどざっと書けば、美しい蓮の花が咲き乱れ良い香りを漂わせる池のふちにお釈迦様が散歩の途中、その中を覗いてみるとそこからは地獄の底が見えた、三途の川や針の山が見える透明度の高い綺麗な池から見えたその景色にお釈迦様はある男が目に留まる。その男は人を殺し家に火をつけ泥棒を働いた罪人のカンダタ。そんな男が唯一良い事をした、それは蜘蛛を殺さずに助けてやったこと。お釈迦様はカンダタを見ながらその行いを思い出し善い行いをした報を出来るならとカンダタを救うことに、蓮...この感想を読む
御釈迦様はご覧になっていた
地獄にいる大悪党のカン陀多が生前にたった一度だけ、踏み潰そうとした蜘蛛を「こいつも命があるのだから」と思い止まったことでカン陀多を助けてあげようと、極楽にいる御釈迦様が蜘蛛の糸を垂らしました。その糸に捕まって極楽へと向かうカン陀多の後についてくる悪人たちに、「下りろ」と言ったことで糸が切れ、カン陀多も地獄へ戻ってしまう。「自分だけが苦境から逃れられるかも知れない」という極限の状況でカン陀多のように「下りろ!」などと言わずに居られる人間がこの世界にどれだけ居るのか。しかしカン陀多の唯一の善行が特別に御釈迦様の記憶に残っていて助けようとしたのだから、「下りろ」なんて言わなければ、せめて黙々と糸を上っていれば、下の悪人たちはともかくカン陀多は助かったはずです。いいことをしても、悪いことをしても、必ず誰かが見ているんですよという、子供への教えなのでしょう。
人間の本質を捉えた一作
この作品で最大の見せ場といえば、カンダタが上から垂れてきた蜘蛛の糸を見つけそれにつかまって地獄から極楽へと向かおうとする場面である。実はこれは、以前にカンダタが小さな蜘蛛を殺さずに助けてやったことがあり、そのことを思い出した釈迦がなんとか彼を助け出してやろうとして行ったことであった。ではここから物語はどのように進んでいくのであろうか。カンダタは蜘蛛の糸につかまって極楽へと行こうとするのであるが、当然のように他の罪人たちも糸を見つけてなんとか助かろうとする。しかし糸が切れてしまうことを恐れたカンダタは、他の罪人たちに向かって「お前たちは降りろ」ということを言ってしまう。しかしその時、糸がきれてしまい希望は絶たれてしまうことになるのである。これは人間の本質的な部分をよく描いていると感心させられずにはいられなかった。