グスコーブドリの伝記のあらすじ・作品解説
グスコーブドリの伝記は、宮沢賢治が晩年の1932年に雑誌「児童文学」に発表した児童向けの童話であり、宮沢賢治の生前に発表された数少ない作品の一つである。 飢饉が来て両親もいなくなってしまったグスコー・ブドリと妹のネリの兄妹だったが、妹ネリは何者かにさらわれてしまいブドリは一人で働くことになる。やがて火山技師となったブドリは人工降雨などの技術を開発して飢饉を救い、妹のネリとも再会するがまたも深刻な冷害が国を襲う。火山爆発の温室効果によって地表を暖めて冷害を食い止めるため、ブドリは一人で爆破のために火山へと向かうという物語である。 およそ10年前頃に執筆されたとされる「ペンネンネンネンネン・ネネムの伝記」を原型としているが、農学校教師であった賢治自身の体験が反映され「自己犠牲」のテーマが濃い、よりシリアスなストーリー展開となっている。 1994年に中村隆太郎監督、2012年に杉井ギサブロー監督によりアニメーション映画として映画化された。
グスコーブドリの伝記の評価
グスコーブドリの伝記の感想
読めば読むほど奥深い!!
どのお話も、子どものころ読んでちんぷんかんぷんで、大人になって読み返してみたら、なんだか深さを感じた本です。 グスコーブドリも感動しますが、私がこの中で一番好きなのは、「猫の事務所」です。 好きというか、なんかリアルで心にグサグサ何かを突きつけられるような作品です。 絵が猫なので、ちょっとやわらいだ感じになっていますが、かんたんに言うと、一匹の猫が他の猫達から仲間はずれにされて、最後にライオンが現われてみんな罰を受けるみたいな。 なぜライオンがでてきたのかとか細かいことを理屈で考えてしまうと宮沢賢治の作品はわけわからなくなるのですが、仲間はずれの仕方とかが人間世界にもありそうなリアルさでちょっと怖いんですよね。 そのストレスで熱が出て、出社できなくなったりして・・・なんか悲しいんですが。 最後のライオンも、何ていうんだろう。「やったことは、自分のところに還ってくるぞ!」っていわれてるみ...この感想を読む
不条理なんだけど、童話的でもある
表題のグスコーブドリの伝記は、読んでいて深く考えさせられる短編小説です。客観的にみると主人公のブドリはなんてかわいそうな、不幸な生い立ちなんだろう、彼にとって人生とはなんだろうかと思わずにはいられないのですが、ブドリの行きつく境地、自己犠牲の精神は、一人の人間でありながら、人間離れした崇高さを感じ、深い感動を覚えるのです。このくらい絶望的でもある話をますむらひろしのユーモラスな猫によって描かれることで、不思議とおとぎ話、童話のように昇華されているところがまた素晴らしいと思います。個人的には猫の事務所の終わり方が大好きなので、この本は何度も読み返しています。