『ブラック・レイン』から学ぶ、アメリカ人から見た日本のイメージ
目次
ロケーションは、約30年前の大阪で行われた
1989年(平成元年)の映画。
ニック刑事(マイケル・ダグラス)の相棒チャーリー刑事(アンディ・ガルシア)が、佐藤(松田優作)達に殺される前の場面を、大阪の阪急梅田駅コンコースでロケしています。
地元なので、「おー、真夜中にあそこで撮ったのか」と感心しました。
紀伊國屋書店から出たところです。
今はもうない風景に、郷愁をそそられます。
深夜にポリシャーをかけて、掃除していたおっちゃん達が映っていましたが、あれは本物の清掃員を撮ったのでは。
阪急梅田駅ターミナルビル1階コンコースの風景は、改装されて、まったく変わってしまいました。
映画内に出てきますが、あそこには、高い天井にシャンデリアがあって、ステンドグラスの絵柄窓があり、西洋風の装飾柱が立っていました。
何故、あれを改装したのか未だによくわかりません。
もったいないことです。
アメリカ人から見た、日本人のイメージがわかる
30年も前の映画なのに、アメリカ人視点の日本人のイメージがほとんど変わっていないことに驚かされます。
いや、『ブラック・レイン』公開当時より現在のほうが劣化しているかもしれません。
昨日たまたま、地上波放送の『ウルヴァリン:SAMURAI』(2013年公開)を観てしみじみと感じました。
『X-メン』シリーズのスピンオフ作品らしいのですが、笑ってしまいます。
日本ロケをする必要性がまったく無い。
真田広之が悪役をする必要もありません。日本人俳優の無駄使いです。
忍者が出るのはまだ許せるのですが、西洋風の弓を使うのは我慢できませんでした。
ところが、『ブラック・レイン』では、多少おかしい点(刺殺される用心棒の「親分ガ、黙ッチャイネーゾ」片言の日本語など)もありましたが、日本人の本質を突いた描写をしていました。
ケイト・キャプショーが、日本に7年住む外人ホステス役をしていました。彼女が的を射たセリフを言います。
「7年暮らしてまだ戸惑うことばかり」
「“イエス”は“ノー”で、“多分”は“ダメ”て事」
「ガイジンには無理なのよ」
など。
日本人ならば「“イエス”は“ノー”」の意味を無意識に理解しているはずです。
お土産を「つまらないものですが」と渡すこと、面接官や仕事相手に「未熟者ですがよろしくお願いします」などと言ったことのない日本人は、99%いないでしょう。
アメリカ人相手にこんなことを言うと、怒られるか、なめられるかどちらからしい。
May Jへのバッシング騒動を思い出す
歌手のMay Jさんのことを、気の毒に思い出しました。
ネット上では「他人のふんどしおばさん」、「カバーソング芸人」とかボロクソに言われています。
彼女が日本人受けしないのは、美人な上に自信たっぷりに見えること。そして歌が上手なことを謙遜しないことにあるのです。
本当のことを言っては駄目なのが、日本文化だから。
日本の女優さんならどんなに美人でも、「お綺麗ですね」と言われたら、「いいえ、そんなことありません」といった意思表示をします。
それをしなければ、美人なのを鼻にかけた傲慢な女扱いされるからです。
「“イエス”は“ノー”」ならば、“ノー”は“イエス”でもあるのです。
日本人なら無意識に理解している行動様式であるので、頭では理解できても心情として受けとめられない。
マイケル・ダグラスもアンディ・ガルシアも、明らかに添え物
『ブラック・レイン』に話を戻します。
松田優作の鬼気迫る演技は、何回観ても飽きません。明らかに狂気を宿しながら、他者を殺すことも、自らの死をも恐れない悪役ぶり。
リドリー・スコット監督もそのことがわかっていたようで、全体から見るとマイケル・ダグラスもアンディ・ガルシアも脇役のようです。
故人である若山富三郎が演じた、ヤクザの親分の気迫と存在感も凄まじい。
対等に交渉しようとするニック刑事(マイケル・ダグラス)に、それまで英語で話していた親分が、怒りの形相になり、日本語で「殺したろか、このガキゃ」とすごむシーンは何とも言えない爽快さがあります。
「親分、格好良いー!」です。
未だに嫁から怒られる映画
嫁を結婚前のデートで、この映画に誘いました。
「“黒い雨”、観に行こうか」とだけ言ったのです。半分冗談で。
「え?あの『黒い雨』?ええよ」
嫁は、井伏鱒二原作の原爆をテーマにした映画と思い込んでいました。
普通ならば、映画館前のパネルを見れば気がつきそうなものなのだけれど、天然なので映画が始まってからも、しばらく首をひねっていたそうです。
「何時になったら原爆が落ちるのか」と。
映画が終わった後、「松田優作が良かったね」と声をかけると、前を歩いていた嫁が、「ふー」とため息をついて、「あん?」と振り向きました。
そして「あんた騙したね、黒い雨とちゃう。ブラックレインやん!」と松田優作演じた佐藤の様に凄まれたのが、昨日のことのようです。
ぶつぶつ文句も言っていました。アメリカからの旅客機が、伊丹空港(大阪国際空港)への着陸時の映像に、煙突からモクモクと煙を出す工業地帯が写っていたのです。
「大阪はあんなに汚くない。公害の国みたいなイメージ操作やん」と。大阪出身者から見るとそんなツッコミどころもあったようです。
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