働く理由
真面目であればあるほど
バカを見ると思う。結局は柔軟であることが必要なのだ。それが仕事を続けるコツなのではないだろうか。ガチガチに硬い真面目さは、仕事をしている方も、頼む方も、疲れきってしまう。
銀行員の「私」。与えられたルーティーンワークを真面目にこなしていても、こなしているだけ。ノルマも、こなしているだけ。私にはそのように見える。もしかしたら、「私」の顧客には安心感を与えても、「私」自信には虚しさが積もっているのではないだろうか。毎日毎日同じことを繰り返し、ただこなしていく。お金をもらうことが働く理由かもしれないが、それだけでいいのだろうか。
「私」が友人から買わされた数々の商品。その中に答えがあると感じる。結局は、真面目にノルマをこなしても、返ってくるのはこんなガラクタだけなのだ。真面目に、真面目にノルマをこなして得たものは、なんだったのだろう。本人も、きっとそう感じているはずである。いつ辞めるのか。もう、そこまで迫ってきている。もうすっかり、疲れきっている。
ぜひ、滝本君とよりを戻すことを勧めたい。「私」が苦しくなっている真面目さを解放してくれるだろう。しかし、結婚は勧めない。あまりにも真面目な「私」と滝本君では、夫婦になったときには問題が生じるでしょうね。
少し話が逸れたが、「私」には少し休んで欲しい。真面目を休む。躾けられたアシカのままでは、居られない状況にある。自分が思っている以上に、真面目過ぎるのだ。忙しさにかまけて、何故働いているのかを忘れてしまいがちだ。一度立ち止まって、どうしたいのか、自分自身に問いかけて欲しいと思う。
愛の奇跡
私は好き好んで専業主婦になったわけではない。仕事をし過ぎて病気になり、退職せざるを得なくなったのだ。もともと何かをしていないと落ち着かない性分であるし、何よりその仕事が好きだった。だから、専業主婦になっても、サザエさんのように落ち着いてお茶などすすっているような生活は嫌だと思っていた。しかし、いざ、専業主婦になってみると、家事一つにも広さと深さのようなものがあるこもに気付く。他人に評価されない分、特別凝ったことも出来るし、何もしなくてもペナルティーなどはない。仕事としては、なかなか面白い仕組みだ。対価は、暮らしやすさ、と言ったところか。
「彼の必要とする家の備品に喜んでなろう」という表現に衝撃を受けた。備品なんて言い方、冷たいじゃないか。私たちのやっていることは、しっかりと血が通っている。モノである備品たちは、愛する誰かのために、なんて、思っていないはず。そこが備品と私たちとの違いである。そう、愛がなくては主婦はやっていけないのだ。そこに、彼女の涙のわけがある。白い枕カバーにひっそりと染み込む涙。いくら「備品」だと言い聞かせていても、本当は愛を欲していたのだと気付き、与えられた愛に驚く。夫婦の愛は、一方通行では成り立たない。
私はと言うと、今日も旦那の仕事に合わせて寝起きし、子どもの体調に右往左往する。ルーティーンワークもしっかりこなす。こるが専業主婦の仕事だ。今までもやって来たつもりだが、専業主婦になって見えた世界はサザエさんではなかった。思っていたよりも専業主婦は大変だ。それは、仕事の広さと深さがあるから。イコール、愛の広さと深さなのである。対価は、愛。まあ、惚れていると言うのは、楽だと思うけどね。
何のために働くのか
上司に聞かれたことがある。私は答えられなかった。
いったい、人は何のために働くのか。これは、永遠に解けないパズルのようである。ヒントが出てきたような気がして解き始める。しかし、何か引っ掛かるものが出てきて、また立ち止まって考える。その繰り返し。
仕事をするのは楽ではない。だから、何かすがるような目的が欲しいのだ。家族のためなんて言って、せっせと働く男たちは素晴らしいと思う。女の場合もあるが。しかし、何か寂しい気持ちになるのは私だけだろうか。潔く「お金のため」と言って働けたらどれだけ楽なのだろう。
働く理由だけに、とにかく執着していた。理由なんかなくったって働くことは出来るし、そのような人は大勢いる。理由が欲しいと言いながら、「家族のため」「お金のため」だけに働くということに寂しさを感じたりもする。それはきっと、「自分」と言うものがそこにないように感じてしまうからだろう。
せめて、小説の中で働く理由を体感したいのだ。
せめて、小説の中で爽やかな風を体験したいのだ。
戦って、戦って、ボロボロになった者は、こう言ったもので、自分を励ましたいと思う。夢、希望、達成感。それを味わうことが出来るのは創造物の中でのみ、と寂しいことは言いたくないが、現実は厳しいのだ。小説の中だけでも、どうしたいのか、考える時間が欲しい。
結局、何のために働くのか、答えは出そうにない。どうしたいのか、全くわからない。グルグル考えて、渦の中に巻き込まれただけ。未だ私は闇の中だ。
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