ぼっけえ、きょうてえの評価
ぼっけえ、きょうてえの感想
生理的にイヤ〜な感じを堪能できる短編集。
著者の出身地・岡山の方言がその力を遺憾なく発揮し、物語を盛りたてています。「きょうてえ、きょうてえ…」など、意味もそうですが、音としておもしろい、声に出してみたくなるフレーズをそなえた短編です。しかし個人的に一番こわかったのは「密告函」です。コレラが出た家を密告する函の管理を託された主人公が経験する恐怖。病気の発現はその家の命運を左右する一大事で、それを告げるか告げまいか、逃げ出したい一心を抱えながら、故ある女とただれた関係におちいってしまう、しめっぽくむっとした感じをよく出している文章に、不快感をあおられます。全体的にねちねちしたところを意図的によくあらわした文章で、話の筋というより、生理的にひんやりさせられるホラーだと思います。
読みやすく、リアリティのある短編集
第6回日本ホラー小説大賞受賞作です。表題であるぼっけぇ、きょうてぇとは岡山の方言でとても怖いという意味。まさにそんな作品です。醜い女郎が間引きをしていた母親の手伝いをしていたという壮絶な人生を語る物語。女郎が語り掛ける口調が印象に残ります。他の3作も収録されていますが、どれも岡山の方言を生かした作品で、独特な言い回しが恐怖を誘い、大変リアリティがあります。恐怖の種類としては、人の心でしょうか。この本を取ったひとつの理由である、表紙の甲斐庄楠音の美人画も物語と相まって素晴らしいですね。まさに、小説とぴったりの装丁だと感じます。短編でさらっと読めてしまいますので、リアル感のあるホラーが好きな人にお勧めしたい。