胸取って再建手術して、転移の心配もそんなにはないらしいんですけど、それだって確実なことじゃないし。まわりの人はもう終わったことなんだから忘れろって言うんですけど、私には全然終わったことじゃないんです。
上原春香
理解が深まる小説レビューサイト
小説レビュー数 3,368件
少し癖のある無職の人がテーマの、5つの短編集です。こういう人、きっとその辺に居るんだろうなあ、という人たちが主人公。そして終わり方は、まだ続きがありそうな終わり方ばかり。読者に委ねているのだろうか。感情移入して読むにはちょっと難しい話ばかりだけれど、読後感は悪くないと思った。この著者の文章は、読みやすくて好きです。表題作、「プラナリア」の、大病を患った後、その病を、「アイデンティティー」と言いたくなる気持ちはわかるような気がした。「どこかではないここ」の主人公は、パート勤めをしているけど、これも無職なのかな?心も体も張りつめたように頑張っているのに報われず…辛いだろうなと。。でもこの話が一番好きかも。最後に少しだけ、爽快感があるような気がするから。
上原春香
入院中に知り合い、退院してからアルバイトを紹介してくれた人との食事中、春香の病気の話になった時