松田優作の怪演ぶりが見れる作品 - 家族ゲームの感想

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家族ゲーム

4.804.80
映像
4.20
脚本
5.00
キャスト
5.00
音楽
4.20
演出
5.00
感想数
1
観た人
1

松田優作の怪演ぶりが見れる作品

4.84.8
映像
4.2
脚本
5.0
キャスト
5.0
音楽
4.2
演出
5.0

目次

ただならぬ家族に猛烈に引き込まれる

松田優作主演による1983年公開の作品、本間洋平著「家族ゲーム」を原作として映画化されました。今から、30年も前の作品と言う事で、古る臭さを感じるかと思っていましが、あまりにも、個性的な登場人物と、ただならぬ雰囲気の家族に引き込まれてしまいました。音楽もなし、説明的な台詞もないのですが、それがかえってリアルな存在する空間として成立させています。

一番気になるのが、沼田家の食卓です。カウンターのように、横並びに整列した中で、窮屈そうに食べる家族の風景は、もうすでに崩壊した家族を象徴しているのかも知れません。家族だから、お互い思いやって当然、助けあうという、キレイ事を見事に切りすてています。自分の主張は、常に正しいと思っている父親、しかし中身は何もわかっていない父親です。彼の言葉に服従している妻、子供達の崩壊を心地よく描いていると思いました。

なぜ心地よいのかと言うと、映画「家族ゲーム」は、悲観的に訴える描き方をしていません。このようなテーマで、コメディとして成り立たせ、変人の集まりのような家族構成として作りあげているのです。「家族ゲーム」を観ている人達は、変な人だなと疑問を感じつつ、気がつけば笑っている。社会的な問題を、コメディで描く事で、より強く印象に残るとともに、違った角度から物事をきりとると、人間ってこんなにも、滑稽だったのかと、改めて感じる事ができます。


すっきりしたシーンは?

面白い場面や台詞が満載の「家族ゲーム」ですが、一番印象に残ったシーンはどこでしたか?私は、家庭教師演じる松田優作が、教え子の茂之を引っぱたくところです。ぐだぐだと何もしないくせに、主張ばかりをして、世間をなめている茂之の頬を引っぱたくところです。ヘラヘラ笑っている少年の頬に、松田優作の大きな手の張り手が飛んできて、少年は鼻血を出す場面は爽快でした。現実では、暴力とみなされ、いけない行為なのかも知れませんが、時と場合によっては、必要なのかも知れませんね。


不思議な登場人物達

主人公の松田優作の主なキャストが、上手に描かれているのは、もちろんなのですが、「家族ゲーム」では、メインキャスト以外にも出てくる登場人物が、あまりにも個性的で可笑しすぎます。ストーリーには、あまり関わってこないし、意味のない台詞も多いのですが不思議な魅力に、目が離せないのではないでしょうか?

一番変だと思うのが、近所の奥さん役の戸川純、彼女の持つ独特な雰囲気で、いつの間にか、茂之の母である千賀子に相談を持ち掛けて、沼田家で泣いています。これって、すごくおかしなシュチエーションなんですが、ありえなくない展開だともとれるのです。悩んでいた人が、優しい言葉をかけてくれた人に付け込んで行くのは、ありえる事です。

茂之の学校の担任をしている先生も気になるところです。ぶっきらぼうで、生徒の事なんか、何も考えていない先生です。嫌な先生なのですが、私は妙に好感を持ってしまいました。これこそが、人間本来の姿なのかも知れません。嘘のない人間の描き方に好感が湧きます。


最後のシーンの意味とは?

「家族ゲーム」の最後のシーンに対して疑問を持ちませんでしたか?私は、多いに疑問と言うか、登場人物達は、一体どうなってしまったのかと、考えずにはいられません。家の回りに、ものすごい音のヘリコプターが飛んできて、母親が起こしに行った息子達は寝てしまっているのですよ。それも昼間から、あんなにぐっすり眠ることなんて、ないですよね?もしかしたら、2人の息子は死んでいるのかも?ヘリコプターがすぐそばまで来てるのは、火事かテロか?そうな風に考えてしまっていると、母親も昼寝をしてしまうんです。

この場面は、なにを言いたかったのか?わかっている方がいたら、教えて欲しいです。もしかしたら、「家族ゲーム」のゲームが終了したという事なのかな?


日常の中にある狂気

大きな世界や社会には、いろいろな出来事が詰まっています。でも、本当の人間をみるのなら、家庭内は欠かせない場所なのだと思います。人間のドラマが家庭で生まれ、日々繰り返される日常の中でこそ事件は、起きるものなのかも知れません。「家族ゲーム」の中で見た出来事が、一歩間違えば狂気にかわり、父親が言っていたように、バットで殴られるまでの事件となるのかも知れません。



松田優作という名優

最近では、松田優作さんの二人の息子さんがテレビでもよく見かけますが、やはりお父さんである松田優作の存在感には、とても及びませんね。「家族ゲーム」をみて、松田優作の名優ぶりに驚かせられました。彼から伝わってくる緊張感が、その場面の人々に感染して、メリハリのある見応えのあるシーンへと、変えてしまっているように思えます。松田優作という名優をみるだけでも「家族ゲーム」は価値のある作品です。

その他にも、伊丹十三もいやな父親役がピッタリではまり役。母親役の由紀さおりのひょうひょうとした演技も作品の見所となっています。いつの時代でも、楽しめるちょっと変な映画でした。


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