股旅の評価
股旅の感想
時代劇の中での青春の光と影
市川崑監督作品の中でも、5本の指に入る傑作の一本です。道中を何となく共にした三人の渡世人、黙太郎(萩原健一)、信太(尾藤イサオ)、源太(小倉一郎)が道中で繰り広げるロード・ムービーです。山野を流浪する渡世人の、美しく研ぎ澄まされた映像美を作りだした小林節雄のカメラがまず見事です。三人のカッコ悪いと思える青春の光と影を見事に描いている脚本は、詩人でも有名な谷川俊太郎と監督の共同脚本になっています。特にショーケン、尾藤イサオ、小倉一郎というキャスティングがこの映画で絶妙にはまっていて、それを観るだけでも価値のある作品です。時代劇というとなんだか敬遠されてしまいますが、この映画を観ればチョット考えも変わるかもしれません。
渡世人映画の傑作
ATG(日本アート・シアター・ギルド)の第二期にあたる作品。リアル志向で描かれた江戸時代の食い詰めた渡世人の暗い乾いたストリーには息をのむものがあります。いわゆる「格好いいやくざ映画」の対極にある「情けないやくざ映画」なんですが、芝居ががった形式美よりも、本当の江戸時代の人間の生活様式を描こうとしているように思えました。特に斬り合いでは綺麗な殺陣ではなくて、喧嘩の現場でただ闇雲に振り回すような形になっており、逆に迫力が在ります。主演の萩原健一は監督の市川崑とそりが合わなかったと言われていますが、小倉一郎 をはじめとして演技には引き込まれるものがあると思います。見ておくべき日本映画の一本と言えるでしょう。