さすが親子の情は争われぬ。己の身を恥じて、姿を見せなかったが、今こそ一人の子の命を救おうとしている
奉教人
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これは芥川が日本の近世頃の日本語のキリシタン文献を参考にしたという体裁のキリシタンを中心とする物語です。あくまで当時のキリシタンの歴史に仮託された物語ですが、芥川の才能を感じさせる作品です。まず文章そのものが、素晴らしいです。芥川は古典にも深い教養があり、それでいて西洋文献にも通じていたわけですが、当時の文献とそっくり間違うばかりの文章を精緻に組み立ててこれ自体の一編の古典物語の趣があります。もうひとつの魅力は大衆的な作家としてのおもしろさです。芥川は孤高の文学者ではなく、大衆的な味わいがあったのは周知のところですが、これもキャラクターといい、話の設定といい巧みに作られています。圧巻なのはラストです。ただのキリシタンの罪をテーマにした純文学かと思ったら最後に思いっきりの背負投げを食らわされます。巧みなプロットが冴えた一品です。
奉教人
ろおれんぞ が髪を乱して、焔の中から幼子を抱き抱えて救出した場面