名作から新たな発見を見つける!
巨匠・芥川龍之介の文学に触れる
誰もが知っている芥川龍之介の名作「蜘蛛の糸」「杜子春」を含む短編集です。芥川龍之介の短編は、学校の教科書でも掲載されていました作品もあり、日本人にとって、馴染み深い作品ではないでしょうか?
作品は、10作品掲載されていますが、その話一つ一つが、まったく違った色をなしているかのように、背景も視点も、雰囲気も独自の色を醸し出しています。一人の作者から、これだけの世界観が生み出される作品の素晴らしさを堪能して下さい。
また、子供頃に読んでも、大人になってから再度読むことで、違う角度から作品の魅力を感じる事ができます。教訓めいたものが、残る物語ですが、再び読むことにより、人物の奥深さや、本当に大切な物、日々葛藤している弱い気持ちなど、生きていれば誰でも味わう、心の葛藤が描かれています。邪悪なものに立ち向かう心、また邪悪なものは外にも自分の内側にもある、という事を教えてくれる人生の指南書とも言える一冊です。
作品一つ一つが、短いので時間がなくても、気軽に読めるのも嬉しい。
現代小説と違って読みにくい
現代の小説とは、また違った文章表現となっているので、慣れない方は読みにくいのではないでしょうか?堅苦しさを感じ、国語の授業を思い起こさせます。
時代背景も、今の私達には、想像が付きにくい時代の話や、地方の話、またトロッコなどの一度も見た事のないような、乗り物を描いているので、じっくりと読まないと想像ができず、スムーズに読み進める事ができません。反対に、昔あった時代を懐かしみ、時代の流れを感じる事ができますが、リアルな世界として心に響かないのではないでしょうか?
芥川作品の世界観の広さを知る
芥川龍之介のこれら10作品は、これほどの短さの中で、世界を作り上げ作品をまとめ上げている凄さです。
同じ人が書いている小説は、大体が同じ世界の中で繰り広げられている物語や主人公、似たようなシュチエーションや考え方が多いのですが、この中で描かれている10作品は、どれも違った世界観で描かれています。一番それを感じる部分は、作品の冒頭部分。前の作品と違う世界が、冒頭部分からすでに繰り広げられますので、読んでいるこちらの方が置いて行かれそうになるほどです。
「蜘蛛の糸」ではお釈迦様と地獄界を描き、「蜜柑」では、列車の中では奢った主人公が少女の行動で心を癒され、「アグニの神」では魔術師がアグニの神を出現させ、「杜子春」では本当に大切なのはお金ではなく人の心だという事を悟ります。これほどの幅の広い世界に触れる事はあまりないのではないでしょうか?
自分の好みや好きな物ばかりを選んでいくと、いつしか思考が狭まり、広い世界を意識できなくなっていくような気がします。芥川龍之介作品は、そんな私達の狭くなりがちな考え方を、幅広く支えてくれると思います。
芥川龍之介の心を想像してみる
本を読む楽しみは、物語を想像しその世界を一緒に生きるという楽しみ方がありますが、もう一つの楽しみとして、作者の心を想像してみるという方法もあるのではないでしょうか?芥川龍之介氏の心なら、なおさら知ってみたくなります。
これらの作品の核なる部分は、人間にとってなにが一番大切なのかを解き、それは物やお金ではなく、心に正直に生きるという事だという所です。「杜子春」では、お金や物よりも何よりも心を動かしたのは、母親の気持ちでした。「トロッコ」では、遊びに夢中になっていた少年が家を恋しさに夢中に走ります。黒犬を裏切った白い犬は、死ぬ前に飼い主の元に行きたいと願います。日頃、欲望にかられて忘れてしまう事や、逃げによって失ってしまう心の大事な部分を、思い起こさせてくれように、描いているのです。
また、悪人に対して芥川龍之介氏は、痛い目に合わせてしまうのがほとんどで、スッキリとしますが、自分自身への戒めも忘れてはいません。そんな描き方から見て、他人にも厳しいけれど、自分自身にも厳しかった方なのではないかと、想像しました。
自分の好きな作品を探す
「蜘蛛の糸・杜子春」は短編が10作品はいっていますが、その中で自分の好きな作品はどれですか?様々な作品があるので、自分の好きな作品を選んでいくのも面白いです。私は、最後の作品となっている「白」が一番好きです。今の時代でも、コマーシャルで使われている白い犬がいますが、こちらの作品に登場している白もとてもリアルに描かれています。白は犬なのですが、その犬がどう思っているのか、読む手の心を掴んでいきます。どうにかして、白を飼い主の元に帰してやりたいと、誰もが願ってしまうのでは、ないでしょうか?
「トロッコ」では、少年の好奇心から、不安までを事細かに綴っており、心細さがこちらに染みてくるように伝わり、思わず家に帰りたくなってしまいますね。このように、自分にとって芥川龍之介作品の中で、どれが一番好きかを考えながら読めば、新たな発見が見つかるかも知れません。
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