歯車 他二篇の評価
歯車 他二篇の感想
芥川龍之介の自叙伝的な小説
よくここまで書き切れたなと思われるほど狂気に満ちた作品です。偶然目にしたもの、目にしたような気がしたものが全て意味を持ち、「凶」が連鎖を続けていくのです。どうでもいいような一点に神経が向き、こだわり続け、ただの偶然が次々と必然と化していく様、視界が歯車で覆われてゆく様、読んでいるのが苦痛になります。この作品の執筆当時の芥川の精神状態が、主人公のものと共通するものであるならば、彼が服毒自殺せざるを得なかった理由が理解できるようです。最後に主人公が二階で寝そべっていて、やって来た妻の言葉、「お父さんが死んでしまいそうな気がした」に背筋が寒くなるのを感じずに入られません。