作家・芥川龍之介の晩年の創作上の苦悩を、赤裸々に吐露した、悲愴な人間社会への不信や、人生への絶望感が感じられる随想集「侏儒の言葉」
作家・芥川龍之介の作品は、常に意識的に作品の主題、構成、効果などをあらかじめ緻密に計算した上で、その明確に示された主題、緊密な構成、個性的に描き出された登場人物、少しもゆるがせに出来ない程の的確な表現など、彼は優れて知的な、作家としての意識的な努力を重んじる作家であったと思います。芥川の晩年の「侏儒の言葉」は、盟友の作家・菊池寛が創刊した月刊誌の"文藝春秋"の創刊号から連載されたものに遺稿を加え、全部で二百五十余章からなる随想集で、最近、彼の作品を読破中という事もあり、晩年の人生、芸術、思想、文化など様々なテーマについて、彼の得意とするシニカルでアイロニーに満ちた表現を駆使した、この「侏儒の言葉」を今回、読了しました。この作品を読み終えて感じるのは、全編に色濃くにじみ出ている、晩年の彼の、人間社会への不信や人生への絶望感です。題名にある通り、この「侏儒」というのは道化師の事で、彼は自分自...この感想を読む
5.05.0
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