マドンナの評価
マドンナの感想
一気に読ませるリアリティあふれる物語
奥田英朗らしいハートフルな後味を残す物語この「マドンナ」には全部で5つの短編が収められている。タイトル「マドンナ」が表すように、文字通り会社のマドンナに恋する男たちの話や、閑散としたビルのパティオに定期的に姿を現す老人が気になっている男性の話など、テーマも豊富だ。それらがコミカルになりすぎずに尚且つリアリティあふれるストーリーになっているのは、奥田英朗の想像力の賜物だろう。前述したように、こういうテーマはややもするとコミカルになりすぎて幼稚になってしまったり、文章が浮き足立ちすぎて直視できないような表現になってしまったりすることがよくある。しかしそこは奥田英朗らしいテンポのよい文章と緻密な心理描写で、しっかりと読ませる小説となっているのはさすがだと思う。奥田英朗の代表作といえば「精神科医・伊良部シリーズ」になるかと思うけれど、それ以外の短編も実にハートフルで心地よいものが多い。個人的に...この感想を読む
40代中間管理職の悲哀にクスっと笑える。
40代の中間管理職のサラリーマンの日常を描いた短編集。部下に恋心を抱き妄想したり、同じ年の女性が上司になって対抗心を燃やしたり、子どもがダンサーになりたいと言っているのに悩んだり、年とった父親が気になってきたり…。体育会系のオジサンサラリーマンの悲哀が軽いタッチでユーモラスに描かれていました。価値観の違う人たちとやりとりして衝突するけど、最終的にはオジサンたちが折れ、ほぐされたりして…。年相応の分別・プライドはあるけど、まだまだ少年のような心も持ち合わせているオジサンたちにクスっと笑っちゃいました。そして、驚かされるのはこのオジサンたちの奥さま方の描写の的確なこと。奥田さんは何でこんなに女性側のことを分かっているんだろう!?っと、ドキっとしました。