風の歌を聴けのあらすじ・作品解説
「風の歌を聴け」は日本を代表する小説家・村上春樹の第一作目の長編小説。彼は29歳の時にこの処女作をジャズ喫茶「ピーター・キャット」経営の傍ら完成させた。20代最後の年を向かえた主人公「僕」は、大学時代を回想する形で物語が始まる。1970年の夏休み、海辺の街に帰省した「僕」は行きつけのバーで友人の「鼠」とビールを飲み、そこで知り合った小指のない女の子と親しくなる。物憂く過ぎ去るひと夏のほろ苦い青春を描いた作品。 1979年には講談社の群像新人文学賞を受賞し、1982年に講談社文庫から文庫本が出版された。1981年には大森一樹監督によって、小林薫など主演作品として映画化もされた。 同作は一つの作品として完結されはするが、「僕」のその後の物語は、後ほど出版された「1973年のピンボール」「羊をめぐる冒険」「ダンス・ダンス・ダンス」と続いて描かれた。なお、同作も他の村上作品同様、英語、韓国語、ロシア語などに翻訳され、世界各国で愛読されている。
風の歌を聴けの評価
風の歌を聴けの感想
まだ村上春樹小説を読んだことのない人にお勧めしたい一冊「風の歌を聴け」
生きることの難解さ、生きることの悲しさを歌った村上春樹の処女作品小さい頃から生きることに疑問を感じてきた主人公の「僕」がデレク・ハートフィールドという作家の本と出会い彼が日々の生活を送りながら、デレク・ハートフィールドの言葉から影響を受けて、自分とは何か、この世界とは何なのかを問い始める。デレク・ハートフィールドは物語の内容や文章はレベルの低いものだったが、文章を武器として人生や夢や愛について直接語ることが出来る極めて稀な作家で、その戦闘的な姿勢はデレク・ハートフィールドと同年代のロスト・ジェネレーション作家(ヘミングウェイやフィッツジェラルド)と劣らないと主人公の「僕」は評価しています。デレク・ハートフィールドの「文章を書くという作業はとりもなおさず自分と自分をとりまく事物との距離を確認することである。必要なのは感性ではなく、ものさしだ。」との言葉に主人公の僕は恐る恐るものさしで自分...この感想を読む
三部作を制覇するなら読むべし。
この作品は村上春樹のデビュー作です。なんとなくまとまりがなく御託が多い印象を受けましたが、乾いた感じの文体で、70年代の空気感がサラリと伝わってくるようで、結構好きです。主人公「僕」は女の子とセックスをして、お酒飲んで、サンドイッチなどつまんだりして…。日常の時間をこんなにもゆったりと自由に過ごせてうらやましいな、と思ったりもしました。そして、どうしても「僕」が村上春樹とかぶってしまいます。おそらく自伝的要素も入ってるんじゃないかな、と憶測したりして…(笑)「1973年のピンボール」「羊をめぐる冒険」に続く三部作の1作品目と言うことで、後に続くキーマンである「鼠」も登場。三部作を制覇するには必須の作品です。
懐かしい小説
村上さんの文章は,読んでいて心地よい文章です。本書の描写は不思議な気分になりますが、とてもおもしろい。いろんなことを考えさせられました。読後はとても優しい気持ちになります。そして神戸に行きたくなります。人のつながり、自分の内側、いろいろな意味で自分を見つめ直すいままでにない内容でした。夢と現実のあいまいなところが、違和感無く書き込まれていて、つい、引き込まれてしまう。みんなちょっとずつ、普通ではないんだけれど、何が普通だかもわからなくさせてしまう心理描写にも感服です。村上春樹が好きな人は当然、そうでない人でもこの本は読む価値がある作品です。これだけ長い作品を人に読み込ませる魅力がこの小説にはあります!