色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年のあらすじ・作品解説
色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年は、2013年4月に文藝春秋社より発売された村上春樹の長編小説である。発売前に内容に関する情報がほとんど出なかったことが発売直後の驚異的な売れ行きにつながり、都内では発売前日の深夜から書店前に並ぶファンの姿も見られた。2013年12月までに国内で105万部が発行され、同年のベストセラーとなった。また、2015年6月までに15カ国語以上に翻訳され、中国、アメリカ、イギリス、フランスなど主要各国で発売された。更に、本作品の発売直後、作中に登場するフランツ・リスト作曲の「巡礼の年」は品切れが続出し、2013年5月にユニバーサル・ミュージックから国内盤が再発された。 主人公は、鉄道会社に勤務している36歳の多崎つくるで、本作品は、彼が学生時代に喧嘩別れした親友4人に会いに行くことで、過去のトラウマから自由になろうとする癒しの物語である。風変りなタイトルは、主人公と恋人以外の登場人物の名前に赤、黒、白など何らかの色が含まれていることに由来する。
色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年の評価
色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年の感想
失われた人生を快復する旅の物語
いつも救われてきた気がつけばもう20年以上、村上作品と共に生きてきたのだなあと思います。若い時代の混乱した日々を経て、現在の浮き足立ったお金と効率を追究する世の中にあって、村上さんの深い物語の世界に触れ続けたことで、どれだけ救われてきたか分からないほどです。村上春樹の本と出会えたということは、私の人生において感謝すべき恵みのひとつだったと思っています。村上作品が好きすぎて、個人的な思い入れが強すぎて、批評や評論を読んでもピンと来ないばかりか、腹が立つようなことも多く、実際に作家の手で書かれたもの以外はほとんど手に取らずに来ました。なので、自分が小さな場所であれ、ああだこうだ書く事にも抵抗があるのですが、純粋に個人的な感想として、備忘録として思うところを書いてみようと思います。当たり前のことですが、物語というものは、あくまでフィクションであってそのまま何かを証明することにはなりません。ハ...この感想を読む
新作読んでみました。
連日の新作の勢いにのって買ってしまいました。「人生は複雑な楽譜のようだ、とつくるは思う。十六分音符と三十二分音符と、たくさんの奇妙な記号と意味不明の書き込みとで満ちている。それを正しく読み取ることは至難の業だし、たとえ正しく読み取れたとしても、またそれを正しい音に置き換えられたとしても、そこに込められた意味が人々に正しく理解され評価されるとは限らない。それが人を幸福にするとは限らない。人の営みはなぜそこまで入り組んだものでなくてはならないのだろう?」というところが好きです。リストの『巡礼の年』が本当にピッタリ、聞きながらよむとさらに作品の世界が広がります。考え続けながら読むからこその価値がある本です。思考を放棄せずに、知りたいと思いながら読み進めないと楽しめません。
村上春樹にしては、軽い。
村上春樹らしくないなぁ、というのが私の印象です。それは、主人公が友達にとても依存していること。ここまで極端なことはなかなかないにしろ、「仲良くしていた友達が急に離れていく」ということは、誰しも一度は経験があるのではないでしょうか。なぜ離れていったのか、理由もわからないまま、何年も過ぎ去り、忘れていくものです。そこを、「心の穴」というような表現をし、十数年?引きずる主人公に、子どもっぽさを感じてしまいました。ただし、そういう身近な設定だからこそ、入り込めたのは事実です。なぜ離れていったのか、自分の体験と照らし合わせながら読み進め、すぐに読了してしまいました。最後が尻切れトンボなのは、読了直後気持ち悪かったですが、あれもいい味なのでしょう。