まだ村上春樹小説を読んだことのない人にお勧めしたい一冊「風の歌を聴け」 - 風の歌を聴けの感想

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風の歌を聴け

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文章力
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ストーリー
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キャラクター
4.00
設定
4.30
演出
4.10
感想数
5
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21

まだ村上春樹小説を読んだことのない人にお勧めしたい一冊「風の歌を聴け」

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文章力
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キャラクター
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演出
5.0

目次

生きることの難解さ、生きることの悲しさを歌った村上春樹の処女作品

小さい頃から生きることに疑問を感じてきた主人公の「僕」がデレク・ハートフィールドという作家の本と出会い彼が日々の生活を送りながら、デレク・ハートフィールドの言葉から影響を受けて、自分とは何か、この世界とは何なのかを問い始める。デレク・ハートフィールドは物語の内容や文章はレベルの低いものだったが、文章を武器として人生や夢や愛について直接語ることが出来る極めて稀な作家で、その戦闘的な姿勢はデレク・ハートフィールドと同年代のロスト・ジェネレーション作家(ヘミングウェイやフィッツジェラルド)と劣らないと主人公の「僕」は評価しています。デレク・ハートフィールドの「文章を書くという作業はとりもなおさず自分と自分をとりまく事物との距離を確認することである。必要なのは感性ではなく、ものさしだ。」との言葉に主人公の僕は恐る恐るものさしで自分と自分をとりまく事物との距離をはかり始めます。

村上春樹がジャズバーの経営をしながら書き始めたこの小説は、主人公の僕と作者本人とをたぶらせて書いたのだと小説の内容で判断することが出来ます。アメリカの書店を経営している友人に、デレク・ハートフィールドの本が読みたいと聞いたところ、そんな作家は聞いたことがないと言われました。インターネットが普及し始めてからデレク・ハートフィールドという作家は村上春樹のフィクションであったと知り納得しました。村上春樹の小説は虚実織り交ぜたような不思議なテイストを読者に与え、作家独自の世界に連れて行きます。風の歌を聴けは村上春樹が小説を書くまでの間、ずっと頭の中にあったもの、自分とは、人生とは、世界とは何かを小説にした作家の処女作であり、代表作です。

風の歌を聴けは村上春樹の小説に馴染みのない人におすすめの一冊

村上春樹の風の歌を聴けは、ページ数も少なく読みやすいので村上春樹の小説を読んだことのない人におすすめできる一冊です。作家の次作1973年のピンボールに続く内容となっているので、この小説で村上春樹の作る世界観、ストーリーが暗くて苦手という人は村上春樹と縁がない・合わないと読んでわかります。生きる事とは何か、なぜ生きることとはこんなに難しくて悲しいのかをデレク・ハートフィールドを思いながら生きていくうちに出会う友人の鼠、ジェイズバーで飲んでいる時に洗面所で酔っぱらって倒れているところを介保したのが始まりで出会った女の子との悲しい物語。主人公の僕の暗さを苦手と思う人は、村上春樹の世界観が受け入れられないのは当たり前だと思います。

村上春樹がいかにグレートギャッビーに影響をうけているのかがわかる一冊

村上春樹の処女作、風の歌を聴けはこの作者とは何者かがわかる一冊です。村上春樹の小説や、エッセイを読みましたが、彼はフィッツジェラルドのグレートギャッツビーを何度も読み直すほどその小説に傾倒しています。特にフィッツジェラルドの文章からみられる早熟さを高く評価していて、作者はグレートギャッビーの文頭は今でも読むたび震えるといっています。それがわかるのが風の歌を聴けの文頭です。風の歌を聴けとグレートギャッビーの両方を読むとそれがわかるので、風の歌を聴けを気に入った人は、村上春樹にとって最も重要な本の一冊、グレートギャッビーを読むことをおすすめします。また、文芸評論家の富岡幸一郎氏が村上春樹と彼の経営するジャズバーでインタビューをした際、彼が作品を英文で書いてから日本語に書き直していると話していたのを覚えているとお話しされていました。村上春樹は独自の現代的孤独感を書くことのできる作家です。特にこの風の歌を聴けが私にとって人生で重要な一冊となっています。フィッツジェラルドのグレートギャッビーを村上春樹が翻訳したものを読みましたが、やはり野崎孝氏の翻訳の方が読みやすく、感動する文章が村上春樹の翻訳では上手く表現出来ていませんでした。最近の作品は内容に限りが見え始めているのが正直なところで、今度は村上春樹本人が処女作の風の歌を聴けから色彩を持たない多崎つくると彼の巡礼の年までを英文で書き直しをして出版してほしいと思っています。これは、英文を勉強するためにも、村上春樹の世界観を英文で感じ取れるという意味でも価値があることだと思います。世界中に読者がいますし、それは私だけが決して望んでいることではないと思います。また、富岡幸一郎氏は、今までの日本文学にないかわいた感じの小説と村上春樹の処女作品、風の歌を聴けを評価しています。日本文学から離れた文体、アメリカ文学に傾倒した村上春樹の文学は日本文学の文壇からの評価が低いなか、正しい評価をしてくれていてとてもうれしく思っています。また、富岡氏は、村上春樹は長編ではなく、短編小説の方が得意なのではないかとお話しされていました。風の歌を聴けの次に好きな小説が像の消滅の私にとって富岡幸一郎氏の見解は正しいと思っています。

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