風の歌を聴けの感想一覧
村上 春樹による小説「風の歌を聴け」についての感想が5件掲載中です。実際に小説を読んだレビュアーによる、独自の解釈や深い考察の加わった長文レビューを読んで、作品についての新たな発見や見解を見い出してみてはいかがでしょうか。なお、内容のネタバレや結末が含まれる感想もございますのでご注意ください。
まだ村上春樹小説を読んだことのない人にお勧めしたい一冊「風の歌を聴け」
生きることの難解さ、生きることの悲しさを歌った村上春樹の処女作品小さい頃から生きることに疑問を感じてきた主人公の「僕」がデレク・ハートフィールドという作家の本と出会い彼が日々の生活を送りながら、デレク・ハートフィールドの言葉から影響を受けて、自分とは何か、この世界とは何なのかを問い始める。デレク・ハートフィールドは物語の内容や文章はレベルの低いものだったが、文章を武器として人生や夢や愛について直接語ることが出来る極めて稀な作家で、その戦闘的な姿勢はデレク・ハートフィールドと同年代のロスト・ジェネレーション作家(ヘミングウェイやフィッツジェラルド)と劣らないと主人公の「僕」は評価しています。デレク・ハートフィールドの「文章を書くという作業はとりもなおさず自分と自分をとりまく事物との距離を確認することである。必要なのは感性ではなく、ものさしだ。」との言葉に主人公の僕は恐る恐るものさしで自分...この感想を読む
三部作を制覇するなら読むべし。
この作品は村上春樹のデビュー作です。なんとなくまとまりがなく御託が多い印象を受けましたが、乾いた感じの文体で、70年代の空気感がサラリと伝わってくるようで、結構好きです。主人公「僕」は女の子とセックスをして、お酒飲んで、サンドイッチなどつまんだりして…。日常の時間をこんなにもゆったりと自由に過ごせてうらやましいな、と思ったりもしました。そして、どうしても「僕」が村上春樹とかぶってしまいます。おそらく自伝的要素も入ってるんじゃないかな、と憶測したりして…(笑)「1973年のピンボール」「羊をめぐる冒険」に続く三部作の1作品目と言うことで、後に続くキーマンである「鼠」も登場。三部作を制覇するには必須の作品です。
懐かしい小説
村上さんの文章は,読んでいて心地よい文章です。本書の描写は不思議な気分になりますが、とてもおもしろい。いろんなことを考えさせられました。読後はとても優しい気持ちになります。そして神戸に行きたくなります。人のつながり、自分の内側、いろいろな意味で自分を見つめ直すいままでにない内容でした。夢と現実のあいまいなところが、違和感無く書き込まれていて、つい、引き込まれてしまう。みんなちょっとずつ、普通ではないんだけれど、何が普通だかもわからなくさせてしまう心理描写にも感服です。村上春樹が好きな人は当然、そうでない人でもこの本は読む価値がある作品です。これだけ長い作品を人に読み込ませる魅力がこの小説にはあります!
時代の土臭さと虚無感がたまらなく懐かしい。おすすめの一冊です
生まれ故郷の神戸の人と街を感じさせてくれる本ですが、この風の歌を聴けは,元町と芦屋と魚崎あたりが舞台なんだろう。時代も空間も今の自分にはノスタルジックすぎる。読みやすく取っ付きやすいけど、何度読み返しても、なかなか底は知れない。読み始めてすぐ、以前図書館で借りて読んでいることに気づきました。歳のせいかこういうことが増えました。再読したところ、なんともいえないせつない気持ちになりました。短いエピソードを書き連ねたような構成が心地いいです。淡々とした文章の中に、人にはどうしようもないこともあること、その悲しみ、重みを感じました。日本人がアメリカ人のまねをしていた時代の土臭さと虚無感がたまらなく懐かしい。おすすめの一冊です。
春樹のデビュー作です
私がこの本を始めて読んだのは社会人になって間もなくでした。「ノルウェイの森」が有名になり、初めて村上春樹の存在を知り、まずデビュー作を読んでみたくなって本屋にて文庫本を手に取りました。この物語は1970年の8月8日から8月26日までのほんの18日間の「僕」と「鼠」のストーリーです。現在29歳となっている「僕」の回想として語られるという形式です。春樹の物語に出てくる主人公「僕」には全作品を通じて共通する雰囲気があります。感情の起伏が小さい、淡々としている、でも妙にオシャレ風。春樹の素顔を全然知らなかった当時の私は、この作家さんはどんなイケメン作家なんだろうと思っていました。