好きになったら、相手がなんだろうとそれでいいし、たとえ二木君が性的に誰のことも愛せなくても、私たちは友人として愛し合っている。
藤崎可南子
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三浦しをんらしさ、らしくなさ作家ならではの個性――作家性というのは、一体いつ露見するものであろうか。少なくとも、三浦しをんは就職活動においてすでにその作家性の片鱗を見せていたのだろう。三浦しをんは出版社の採用試験での論文を機に、編集部で才能を認められ作家デビューを果たした。以降はめざましい活躍を見せ、『まほろ駅前多田便利軒』で直木賞を、『舟を編む』で本屋大賞を受賞するに至る。しかし、デビュー作『格闘する者に○』では、三浦しをんの才能の一つである「独自の目線による着眼点」こそめざましいものの、作家性に関してはイマイチ目立っていない。これを裏付けるように、三浦しをんはデビュー以来長く、自分の画きたいものについて苦悩していた、という話がある。本稿では、日本を代表する文学作家のデビュー作『格闘するものに○』について深く切り込むついでに、三浦しをんという作家が確立するまでに「そぎ落とされたモノ」...この感想を読む
これは筆者のシューカツ体験をもとに描かれたデビュー作とのこと。現在の作品とは異なり、文体にかなり勢いがあるので驚きました。主人公の可南子は漫画好きだからと出版社を希望。実際の出版社名がイニシャル表示されていて、想像できたりするのも楽しめました。集英社も講談社も、筆者を不採用にしたなんて、なんてはもったいないんでしょう。。さらに、政治家の父、義母、連れ子である弟の跡目問題など複雑な家庭環境、脚フェチ老人との恋愛など、ブっ飛んだ状況も作品にスパイスを添えています。そして、可南子の妄想が爆走するのが特におもろいです。なんとなく、三浦さんの頭ん中を覗いてみたような気持ちになりました。
今話題になっている三浦しをんさんの一冊目の本ということで特に前知識は入れずに読んでみた。就活小説、と言ってしまっていいのだろうかこれは。タイトルのセンスがいいなぁと思ったのも、手に取った理由のひとつなのだけれど、内容とあまり合っていないような。特に劇的な出来事が起こる訳でもなく、淡々と読み進めて淡々と終わってしまった。あとに残るものがあまり無い。いったい何を書きたかったのだろう?頭の中では悪口を言ったりしているのに実際には口にできない主人公には好感が持てなかったし、話の設定も展開もなんとなく不自然で唐突な感じがしてしまって、そんな楽しめなかった。残念。
藤崎可南子
友人の二木君に、「ホモかもしれない、性的に誰を愛せるのかわからない」と打ち明けられたときに可南子は否定的になるのではなく、受け入れる。
藤崎可南子
受かる確率の低い出版社の面接を前に、出版社で働きたい理由を語る