時生の評価
時生の感想
号泣できる小説でした
ある日出会った人が、何年か後に生まれる自分の子供だ、と聞かされたら、どんな気分になるでしょうか?確実に、信じません。そんな誰も信じられないようなことが起こり、その未来の自分の息子が、自分の人生にとても重要な助言をしてくれる。自分の今のすさんだ生活を変えていってくれる。そんな中で互いの間に「親子」ではないきずなが生まれていきますヒモ同然の生活をしていた主人公が、未来から来た自分の息子との生活の中で、ヤクザのような生活から、前向きな明るい生活をしていきます。そして、結婚し、子供が産まれます。その子供は限られた寿命しかありませんでした。その子供との別れの時、耳元でキーワードを言います。過去の自分が息子に出会えるように。タイムパラドックスの中にある、親子であり、友人同士のような二人の強いきずなに、感動し、涙が止まりませんでした。
東野作品のファンになったきっかけの作品です
タイムスリップもののSF作品です。SFといっても、主人公の時生が、過去にタイムスリップし、自分の父親と、ある目的の為に行動を共にするという話です。タイムスリップといえば、筒井康隆の「時をかける少女」が、私の中でベストでした。書店の棚で、偶然手に取ったときから、東野作品を次々に貪るように読み漁りました。この作品は、全てがラストのトキオの父である拓美が語りかける言葉のためにあると思います。この言葉は、作品を読んで10年が経ちますが、忘れることができません。テレビ朝日で映像化された「秘密」もラストは衝撃的でしが、「時生」のラストは、衝撃的というより感動そのもの、身が震えました。人生でこのような素晴らしい作品に出会えたことが幸せです。
生まれてくることの意味を考えました
ラストの拓実の言葉を聞いて涙が出てしまいました。この物語は生まれてくることの意味を考えさせます。「私は何のために生まれてきたのだろう?生きている意味があるのだろうか?」多くの人が一度はそんなことを考えたことがあると思います。しかしながら、なかなかそれに対する明確な答えは得られず、そうした疑問を抱いたことすら、日常に忙殺されて忘れてしまったりします。子供は親を選べません。もっと裕福な家に生まれたかった、もっと優しい両親の下に生まれたかったと思っても、それを変えることはできないのです。しかしながら、人生はそれだけによって決まるものではなく、自己が人生にいかに対峙するかによって大きく変わるものだということを、この物語は確信させてくれます。