奥様、わたし、一生、この家を守ってまいります
布宮タキ
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単なる不倫の恋の話ではない直木賞受賞作であり、山田洋二監督によって映画化にもなった本作、前評判だけ聞いていると、主人公の女中が、仕えている奉公先の奥様の不倫を知ってしまい、という、いわゆる「不倫もの」なのかと思っていました。しかし、読み終わってみると、印象はがらりと変わり、奥様の不倫騒動は単なるエピソードの一つであり、もっと大きなテーマのある作品だと感じました。この作品は昭和初期の中流家庭の日常の中に戦争がじわじわと侵食してくる様子が女性目線で細やかに描かれ、教科書や史実からではわからない、あの時代の空気が非常によく伝わってくる点が素晴らしく、筆者がいかに綿密にこの時代の家庭における細部までを調べ上げたかがよくわかります。戦前の暮らしというと、もっと貧しいものを想像していましたが、普通の家庭でも女中を雇い、品のある華やかな空気が流れていたことが驚きでした。開戦してからも、すぐには悲壮な...この感想を読む
よみがな:ぬのみやたき
布宮タキ
女中として平井家を守っていこうというタキの決意のこもった言葉。
布宮タキ
故郷に戻っていた女中のタキが、戦況が深刻になってきた東京に、奥様を訪ねてきたときの一言。タキは奥様のために、衣服のあちこちに食糧を隠してきていた。
平井時子
昭和20年の春、女中タキが、戦争はいつか終わるのか聞いたときの一言。