臨場の評価
臨場の感想
警察小説の名手・横山秀夫の「臨場」
警察小説の名手・横山秀夫の「臨場」は、八つの短編からなる連作で、首吊り自殺を偽装した陰惨な殺しの場面から始まる第一話を筆頭に、どの話ものっけから、我々読む者の心をがっちり捉え、有無を言わさず、物語の中に引きずり込んでいく。事件が起こる。死体が見つかる。自殺か他殺か事故死か。検視官が臨場、つまり現場に赴いて判定する。そして、この八編全てに登場して、いわば狂言回しの役を果たすのが、"終身検視官"の異名を持つ倉石義男だ。鋭い勘と冷徹な観察力により、適格な判断を下し、犯人の目星をつける。生き物の生態に詳しく、現場に置かれた鉢植えのサルビアやスズムシの籠、遺体があった花壇のアリッサムの花なども、捜査の手がかりにする。また、ドアの音、室内の臭い、被害者の衣服に付いた埃など、どんなささいな証拠も見逃さない。短いながらも、どの話も上質のミステリの要件を満たしている。そして、全編にさりげなくヒントが散りば...この感想を読む
ずば抜けた観察眼
ドラマも観ていましたが、本の設定よりも若干登場人物の年齢が若目だった気がします。以前文庫本で読みましたが、こちらをたまたま主人が借りてきたので読んでみました。検視官が自殺と判断してしまえば、自殺で終わってしまうかもしれない事件。それをするどい観察眼で暴いていきます。その洞察力は見事というほかありません。ドラマの中では奥さんは亡くなっていますが(何者かによって殺害された)、本書の中では離婚したと書かれていました。本の中では随分女関係もあるようで、個人的には亡くなった奥さんを今でも思い続けるドラマの中の主人公の方が好感が持てました。それにしても見事な腕前でみていて気持ちが良いくらいです。