アガサ・クリスティの初期の作品で、うら若き女性が活躍する冒険小説
考古学者の父親を亡くしたアンは、わずかな遺産のみを手にして途方に暮れることになる。ロンドンの知人のもとで今後の生き方について考えている時、アンは地下鉄のホームで奇妙な事件に出くわす。何かに驚いたように線路に転落する外国人。そして、死亡した外国人を看取った医者と名乗る男。その医者と名乗る男は、一枚の紙切れを落としていったまま姿を消した。アンは、その暗号が書かれているような紙切れを手に取り、事件の渦中へと自ら乗り出すことになる。 アン・ベディングフェルドの冒険が今始まるのだ。この「茶色の服の男」は、クリスティが初期の頃に書いた、ノンシリーズ作品で、タイトルのイメージなどから堅めのスパイ・スリラーかと思っていたら、そのようなものではなく、うら若き女性が活躍する冒険小説というテイストの内容であった。全編ユーモアに溢れていて、実に楽しく読める作品だった。このような内容であれば、当時もかなり一般受...この感想を読む
3.53.5