半落ちのあらすじ・作品解説
新聞社勤務からフリーライターに転向、社会派ミステリー作品を手がける横山秀夫が、小説時代に発表した作品である。 物語は、現役警察官が妻を殺害し自首してきたことから始まる。たくさんの部下や同僚から尊敬されるような人物が、なぜ病気で苦しんでいるとはいえ、妻を殺害したのか。なぜすぐに自首せず、3日後に自首したのか。この空白の2日間を必死に調べる刑事の奮闘。半分しか自供しない半落ちから、全てを明白にする完落ちまでの物語。最近話題になることが増えてきた若年性アルツハイマーや、骨髄移植などの問題を真っ向から取り上げた小説である。 03年「このミステリーがすごい」第1位に選ばれ、映画化もされた。ただ、映画では、万人にわかりやすくする為か、小説で示された大きな人間愛とでもいうものが、家族愛に凝縮されている感があり、やはり原作を読んで欲しいものである。きっと、他の横山作品も手にとってみたくなるに違いない、力のある作品である。
半落ちの評価
半落ちの感想
モヤモヤ
「半落ち」という言葉を知らないし、この言葉からイメージがあまり湧いてこなかった。つまり、タイトルからは内容がわからなかった。そこに、興味をそそられました。内容は妻を殺した警部の自首から刑務所へ入るまでを、それに関わる人の、それぞれの視点で展開されている作品です。どこか「陰日向に咲く」を思い出させてくれる構成でした。(ボクがこちらを先に読んでいたため)なぞが解けそうなところで、別視点の内容に切り替わるので、モヤモヤ感が持続し、最後まで一気に読み上げました。しかーし、最後はかなりあっさりしてました。少し物足りない感じもしましたが、全体的に見れば面白かったです。
やっぱり泣いてしまう
映画の原作です。これは、映画館で号泣してしまい、胸が苦しくなった作品だったので原作が気になり読みました。妻を嘱託殺人してしまった現役警部が自主するまでの空白の二日間を軸に物語が動きます。半落ちの意味や、臓器移植の青年への想い、息子への想い、手にかけてしまった妻への想いに涙が止まらず、映像で観たものを文章で読み直し、また号泣してしまいました。映画では解ってなかったところまで理解することができました。文章で表現できるものと、映像で表現できるものは違うけど、世界観は同じでした。私は涙なしでは読めませんでした。何とも切なくて切なくて。
人間の描写
現職の警察官が嘱託殺人(アルツハイマーの妻)を犯し、自首をする。その経緯についてはしっかり述べるが、殺害から自首の2日間の行動については硬く口を閉ざす。警察・検事・裁判官・記者それぞれの視点から、真実が明らかになっていく。人間の心の動きについての描写が丁寧で引き込まれる。殺人を犯した男は、そう多くのことは語らない。にもかかわらず、彼の心が痛いほど伝わってくる。読み進むにつれて、彼には確固たる信念があるのだという期待も出てくる。罪を犯した者に同情するつもりはないが、それでも、殺人を犯すだけの「理由」に期待してしまう。最後に、黙秘の理由が明らかになる。泣けた。