向日葵の咲かない夏のあらすじ・作品解説
向日葵の咲かない夏は書き下ろしで、2005年11月に新潮社より出版された小説で、作者は道尾秀介である。第6回ミステリー大賞候補となり、本作品の認知度が上がった。2007年のこのミステリーがすごい!では17位にランクインしている。 この作品は小学生である主人公のミチオがクラスメイトのS君の死体を発見してしまい、妹のミカと犯人探しをしていく中で登場人物の奇妙な関係性がだんだん明らかになっていき、最後にどんでん返しが待っているというミステリー小説である。またこの作品では母親からの虐待や、教師の性的暴行や極端な性癖といった社会的問題に触れていることからも注目を浴びている。 本作品のラストの捉え方によって、物語全体の雰囲気や全体の伏線の結果が大きく変わってしまうことから、ブログやSNSでは二つの意見に分かれ読者の議論が後を絶たない。 文庫版は2008年8月の販売から2010年には、実売100万部突破している。
向日葵の咲かない夏の評価
向日葵の咲かない夏の感想
ベストセラー作家・道尾秀介飛躍の作品
一人称の語り手「僕」の語りで始まるこの物語。ミステリー愛好家であればすぐに「信頼できない語り手(Unreliable narrator)」を想起し、これから起こる出来事を全て信じるものかと警戒して臨むでしょう。洋の東西を問わず、一人称の語り手というのは意図的であれ記憶違いであれ必ず嘘を言うと決まっているのです。それをアメリカの文芸評論家ウェイン・ブースは「信頼できない語り手」と名付け、ミステリーの一つの手法として確立させました。日本ミステリー界でもこの手法を取り入れる作家は多く、湊かなえ『母性』や乙一『死にぞこないの青』、降田天『女王はかえらない』など枚挙に暇がありません。そして本作『向日葵の咲かない夏』でも、一貫して主人公「僕」が物語を紡いでゆきます。この作品の驚くべきところは、その「僕」が語ったもののほとんど全てが妄想であったということです。まさか、ここまで土台から根本から嘘だったとは、誰が想像したで...この感想を読む
咲かない夏
後味がとても悪い!との評判を聞いて手に取った本作。道尾秀介氏の小説は他にも手にとっていますが一番最初でかつ一番存在感のあった作品でした。やはり読んだ後の感想は私も同じような不気味だ…という感想を持ちましたが、このような感情を持たせてくれるこの作品に引き込まれている私のことを否定する事は出来ませんでした。ミステリーとしての主観の変化によったトリックも巧妙である上に主人公の感情でここまで雰囲気を作り出せるなんて…!!と思いました。不気味に思わせつつも最後まで読ませる文章力はすさまじいものを感じましたしどのようにとっても私が読んできた小説の中で、強く心に残るものの一つだと思います。
狂気
「向日葵の咲かない夏かー」「そういう時期もありでしょー」ってタイトルを見たとき思いました。読み初めて、すぐに「妹」が亡くなりました。そして、動物が殺された話が展開されました。「はじめっから、どぎついな」と思います。それからの内容もグロかったです。それでも、少年のような視点で夏の景色?情景?が懐かしさをどこか感じさせます。んで、緊張感もあり、読みやすかったです。ラストはかなり衝撃的で侠気でした。「自分を守ることしか考えない人間は他人を不幸にしてしまう」そう感じた作品でした。作品のどこかに良いメッセージが隠されていることもこの作品の魅力です。