死にまつわる厳しくも幻想的な話
暗喩表現の技巧身も蓋もない言い方をすると、本作は人が死ぬパラレルワールドをひたすら見せられる話だ。陰鬱とした空気は常につきまとっているが、蝶や花、星といったメルヘンチックなモチーフを全編でキーポジションに配置することで、悲惨な物語もどこか美しいものに映る。第三章、夫を亡くした妻がその死因を察したシーンでは、特にそれが光っている。闇の中に浮かぶ白い雪。暗中の儚い希望の光のようなものをイメージさせるそれこそが、夫の死因である。闇と光の両方を想起させ、その上でその光を絶望の象徴にするというのは、描写として実に巧妙だと思う。ひどく絶望的でありながら、ひどく繊細で美しい。息子の優しさが父の死へと繋がったという皮肉な事実もまた、ひとつの事象の中で優しさという光と死という闇がひとつに溶け合っており、ひどく残酷でありながら悲劇的な美しさを感じさせるものになっている。第五章と最終章には、読み手に自害を示...この感想を読む
5.05.0
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