向日葵の咲かない夏の評価
向日葵の咲かない夏についての評価と各項目の評価分布を表示しています。実際に小説を読んだレビュアーによる評価が4件掲載中です。
各項目の評価分布
向日葵の咲かない夏の感想
ベストセラー作家・道尾秀介飛躍の作品
一人称の語り手「僕」の語りで始まるこの物語。ミステリー愛好家であればすぐに「信頼できない語り手(Unreliable narrator)」を想起し、これから起こる出来事を全て信じるものかと警戒して臨むでしょう。洋の東西を問わず、一人称の語り手というのは意図的であれ記憶違いであれ必ず嘘を言うと決まっているのです。それをアメリカの文芸評論家ウェイン・ブースは「信頼できない語り手」と名付け、ミステリーの一つの手法として確立させました。日本ミステリー界でもこの手法を取り入れる作家は多く、湊かなえ『母性』や乙一『死にぞこないの青』、降田天『女王はかえらない』など枚挙に暇がありません。そして本作『向日葵の咲かない夏』でも、一貫して主人公「僕」が物語を紡いでゆきます。この作品の驚くべきところは、その「僕」が語ったもののほとんど全てが妄想であったということです。まさか、ここまで土台から根本から嘘だったとは、誰が想像したで...この感想を読む