ラットマンのあらすじ・作品解説
「ラットマン」は道尾秀介が2008年に発表し、山本周五郎賞の候補作ともなったミステリー小説である。 アマチュアロックバンドのギタリスト・姫川亮は、14年来の付き合いであるバンドメンバー達と共に練習に勤しむ日々を送っていたが、ある日仲間と練習中のスタジオで不可解な殺人事件に遭遇する。姫川とバンドメンバー達、恋人、恋人の妹・・・事件を目の当たりにして各々が守りたいものを思ったとき、いくつもの秘めた素顔が交差し始める。 「殺意だけでは、人は殺人者になることはできない。殺意と殺人の間には、いくつもの偶然が介在している。」はたしてそれは偶然なのか、それとも計算された結果なのか。 そして事件の真相が明らかになった時、姫川自身が秘めてきた過去の衝撃的記憶が呼び起こされる。 導入部は一見オカルトな世界観を連想させるが、本編は全くのロジカルで、その対比と伏線も面白い。ラストの鮮やかなどんでん返しが秀逸な作品である。
ラットマンの評価
ラットマンの感想
闇の中の光
おおまかなストーリーとしては、アマチュアのロックバンドが事件に遭遇して、その謎が解き明かされていくというミステリー小説。全体的な雰囲気暗かったなぁ、と思う。最後まで読むとちゃんと救いがあるんだけど、そこにたどりつくまでが終始暗い雰囲気に感じられて、読んでいる間の時間は結構つらいものがあった。一回のどんでん返しで終わらず、何回も読者に対するある種の裏切りのようなものがあり。そこはさすがだな、と。ちゃんと救いがあるので、道尾秀介さんが本来この作品に込めたかったものは、とてもやさしいものなんだろうな、とも(まぁそれでも何度も繰り返し読むような本ではないような気がする)。
二転三転する真相
高校の時から活動しているアマチュアバンドが練習中に遭遇した事件と主人公の過去と現在が語られている話。心理描写を書くところには凄く引き込まれるし、読みやすい。トリックに関してもなるほど!って思ってしまうところも多々あり、夢中になって買ったその日のうちに読んでしまった。二転三転する真相とクライマックスまでのスリリングな展開は面白い。読んでいる途中で飽きてしまった方もぜひ最後まで見るべき。本格ミステリものとしても十分に通用する練りこまれた構成は絶賛されるだけはあるなと。意味深な「ラットマン」というタイトルもなるほどという感じ。センスはかなり高いです。