「最悪」な状況に陥っている3人が紡ぎだすクライムサスペンス
3人の人生が絡まりあっていくストーリー展開この作品は奥田英朗らしい、地に足のついた実直な文章力で書かれたクライムサスペンスだ。ストーリーは「無理」などのように、関係のない人たちの人生が交差する話だ。「無理」でもそうだったけれど、この登場人物たちの個性が実に豊かなのも特長だ。経営がうまくいっていない上に不況に追いうちを掛けられている川谷信次郎、人生に配られたカードがあまりにも悪いと嘆く野村和也、堅実な銀行で働く藤崎みどりは家庭の問題と上司のセクハラに悩んでいた。この全く関係のない3人がまるで引き寄せられるように出会い流されてしまうところが、奥田英朗の淡々とした文章も相まってリアルに頭に映像として浮かぶ。またこの3人の抱えている悩みが深刻で、このうちの3人の誰が一番楽だというようなことがない。皆ぎりぎりで生きているようなところは、読んでいて胸が苦しくなるくらいだった。ちなみに奥田英朗の作品...この感想を読む
3.03.0
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