沈黙の町での評価
沈黙の町での感想
問題作かもしれないが隠れた名作と感じさせる作品
ある一人の男子生徒の死から始まるストーリーこの「沈黙の町で」は、ある男子生徒が学校内で転落死したことから始まる。死んだ生徒は体は小さくて気も弱く、家が裕福だったこともあり、いじめの結果死んだのではないかという疑惑が当然のように浮かびあがったからだ。そしてその真実を追究するために、警察、検察がそれぞれのやり方で調べていくのだけど、そこで浮かび上がってきた事実は皆が想像していたのとは全く違っていた衝撃が、この物語の肝だと思う。いじめをテーマにした物語は数多くあるが、この物語は他とは少し違っているように感じる。一人を多数が攻撃するのは違いないのだけれど、その多数の人間の個々としての敵意が、どこか薄いのだ。もちろんイライラしたり憎たらしくなって攻撃してしまうところもあるのだけど、その加害者たちも確固とした敵意があるわけでなく、どこかしら“なんとなく”とか“ノリで”とかいうところが感じられる。も...この感想を読む
中学生のリアルな日常
中学校の校舎内である一人の少年の遺体が発見されるところから始まり、様々な登場人物の目線で物語は進められていく。作中に出てくる子供同士の会話、周りの大人たちの感情とエゴ、登場人物それぞれの属する社会の中での葛藤がすべてがリアルに描かれている。単純にいじめ=悪という小説は何度も目にしたことがあるが、集団生活に馴染めない子がいじめにあい、どこにでもいる普通の子がいじめに加担してしまうまでのプロセスが綺麗事なく描かれており、自身の学生時代の体験と重なり、物語に引き込まれていった。始めはいじめられっ子を守ろうとしていた子供が様々な事件を経て直接的ではないがいじめに加担してしまうくだりも、もしその立場だったら私もきっといじめられっ子に対して同じような感情を抱いてしまうだろうと倫理的にはいけない事だが共感してしまう。大人の権力を持つわけでもなく、まったくの子供のように大人に守ってもらえるわけでもない...この感想を読む