生と死を見つめ続けた作家の遺作
私小説風の話を含む作品この「死顔」には全部で5つの作品が収められている。その中には私小説風の2作も収められており、恐らくは吉村昭の一生のテーマである生と死についての実体験が綴られている。吉村昭自身、若い頃に肺病を病み、当時実験的であった手術に望んだことは彼の他の作品のいくつかにも書かれており、何度か読んだことがあった。その体験は何度読んでも壮絶で、それでいてどこかしら清らかなものを感じるものであった。今回の「死顔」はタイトルにもなっているその話が吉村昭の遺作となるものである。生と死の両方、どちらかといえばどのように死ぬのか、死とは、と言うことをずっと掘り下げ続けた彼らしい作品だと思う。吉村昭自身の療養生活を描いた「ひとすじの煙」壮絶な手術の末どうにか生きながらえることが出来たものの衰えた体ではあることに変わりはなく、家族と相談の末、吉村昭の次兄がよく行っていたという湯治場に滞在し、療養...この感想を読む
3.53.5
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