誰かが見てても見てなくても、毎日こんな景色なんですね。夏じゃなくても、あたしたちがいてもいなくても──毎日、こんなに綺麗なんだ......
小笠原真奈
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塩の街は、2004年の有川浩の小説作品。発行元はメディアワークス。 舞台は、甚大な塩害により崩壊しかけている日本。ほとんど機能していない社会の中で暮らす男・秋庭と、秋庭と同居する少女・真奈。不自由ながらも穏やかに日々を過ごす二人は、塩害により運命を狂わされた人々との出会い、別れを経験する。そして、世界の行く末を大きく左右する来客が、二人のもとへやってくる。 有川浩はこの作品で「電撃ゲーム小説大賞」を受賞し、小説家としてデビューを果たした。有川作品の「自衛隊三部作」とよばれる三部作の一作目で、「陸」にあたる小説である。当初「受賞作品はすべて文庫化する」という決まりだったためにメディアワークスから文庫版が発売されたが、「本当は最初からハードカバーで出したかった」と出版社に言わしめるほどの作品で、その後大幅に改稿されたハードカバー版が発行された。文庫本からハードカバーになったという異例の作品である。
図書館戦争シリーズにて一躍名を馳せた作家、有川浩氏のデビュー作です。塩が町々を埋め尽くした世界において、東京湾の真ん中に立つ巨大な塩化ナトリウムの結晶を見た者は塩になってしまうという極限状態の中で生きる人々の生活を描いています。有川氏の後の作品でも多く見られる、いわゆるミリタリー系の要素をふんだんに盛り込んだ構成となっており、元航空自衛隊のエリートパイロットの青年と、人間らしさを求めるが故に彼を無意識に振り回してしまう女子高生の二人がメインキャラクターとなって物語は進みます。極限状態の中でむき出しになる人間のエゴ、理想を求めるがゆえに現実にぶつかり、その現実に対して何もできないという無力感、そして何かを為すために自分にとって大切な人を犠牲にできるかという問いを読者に投げかけている作品であると思います。極限状態における愛、倫理観、道徳観、人としての誇りは守られるべきものなのか。自分の関わ...この感想を読む
有川浩デビュー作&自衛隊「陸・海・空」3部作の「陸」にあたる一冊です。ぐいぐいと作品に引き込まれて、一気読みしてしまいました。塩に浸食された街という世紀末的な設定の中メインは人間ドラマとラブストーリー。人間までも塩にしてしまうという死への恐怖、極限状態に立ち向かう中、秋庭と真奈の純粋な恋愛がスイートに描かれていて安心要素でした。秋庭のお姫様抱っこにはきゅんとしてしまいました。甘さのかけらもない切れ者の入江など登場人物たちのキャラの立ち具合もよかった!本編が終ったあとの番外編でその後の世界がわかり嬉しかったです。また、再読したいと思います。
有川浩のデビュー作で三部作の一作目。他の作品と同様に不思議な世界が繰り広げられる。舞台は「塩の街」と化した世界。都市を飲み込み、塩の結晶を見た者も次々と塩になり死んでいく。そんな絶望的な中での恋愛話。高校生の女の子と10歳年上の自衛官が、ひっそりと暮らす中で互いの大切さに気づく。塩害を止め世界を救う為に自衛官は危険な任務を遂行する。話の設定は奇天烈だが、純粋に恋愛を楽しめる物語である。年の差のある恋愛。生きるために互いに暮らし始めた二人だったが、いつの間にか大切な存在になる。ここで感想を書くとベタな「つり橋理論の恋愛」のようになってしまうかもしれないが、なんだか上手いのである、書き方が。有川浩の書く恋愛は私のツボなのである。相当昔に恋愛小説に飽き、次に読み漁った推理小説に飽き、そして最近は有川浩の書く恋愛に戻ってきた。
よみがな:おがさわら まな 年齢(作品時):15~18の間 性別:女 性格:芯が強くとても理性的 外見:おとなしく目立たない 周りからの評価:大人しやか、可愛い 好きな相手:秋庭 高範 両親を失った理由:塩害 秋庭との出会い:暴徒に襲われそうになったところを秋庭に助けられた 親しくなった自衛官:野坂 由美
よみがな:あきば たかのり 性別:男 住まい:新橋 所属:航空自衛隊 性格:意外と潔癖 過去:航空戦競会三連覇 元職業:航空自衛隊二等空尉 恐怖を抱く存在:入江 慎吾 父親との関係:対立後、長いあいだ絶縁状態 高校の同級生:入江 慎吾
小笠原真奈
塩が世界を埋め尽くす塩害の時代、塩は街や人々を飲み込み社会は崩壊しつつある頃、綺麗な海に行きたいと、日が照りつけるなか群馬から歩いて東京まできた青年と出会う。主人公真奈のお願いで同居人秋庭が力を貸し、やっとの思いで由比ヶ浜へ着いた時に真奈がもらした言葉。