塩の街の感想一覧
有川 浩による小説「塩の街」についての感想が4件掲載中です。実際に小説を読んだレビュアーによる、独自の解釈や深い考察の加わった長文レビューを読んで、作品についての新たな発見や見解を見い出してみてはいかがでしょうか。なお、内容のネタバレや結末が含まれる感想もございますのでご注意ください。
塩の街~有川浩~
図書館戦争シリーズにて一躍名を馳せた作家、有川浩氏のデビュー作です。塩が町々を埋め尽くした世界において、東京湾の真ん中に立つ巨大な塩化ナトリウムの結晶を見た者は塩になってしまうという極限状態の中で生きる人々の生活を描いています。有川氏の後の作品でも多く見られる、いわゆるミリタリー系の要素をふんだんに盛り込んだ構成となっており、元航空自衛隊のエリートパイロットの青年と、人間らしさを求めるが故に彼を無意識に振り回してしまう女子高生の二人がメインキャラクターとなって物語は進みます。極限状態の中でむき出しになる人間のエゴ、理想を求めるがゆえに現実にぶつかり、その現実に対して何もできないという無力感、そして何かを為すために自分にとって大切な人を犠牲にできるかという問いを読者に投げかけている作品であると思います。極限状態における愛、倫理観、道徳観、人としての誇りは守られるべきものなのか。自分の関わ...この感想を読む
著者デビュー作。
有川浩デビュー作&自衛隊「陸・海・空」3部作の「陸」にあたる一冊です。ぐいぐいと作品に引き込まれて、一気読みしてしまいました。塩に浸食された街という世紀末的な設定の中メインは人間ドラマとラブストーリー。人間までも塩にしてしまうという死への恐怖、極限状態に立ち向かう中、秋庭と真奈の純粋な恋愛がスイートに描かれていて安心要素でした。秋庭のお姫様抱っこにはきゅんとしてしまいました。甘さのかけらもない切れ者の入江など登場人物たちのキャラの立ち具合もよかった!本編が終ったあとの番外編でその後の世界がわかり嬉しかったです。また、再読したいと思います。
恋愛小説です
有川浩のデビュー作で三部作の一作目。他の作品と同様に不思議な世界が繰り広げられる。舞台は「塩の街」と化した世界。都市を飲み込み、塩の結晶を見た者も次々と塩になり死んでいく。そんな絶望的な中での恋愛話。高校生の女の子と10歳年上の自衛官が、ひっそりと暮らす中で互いの大切さに気づく。塩害を止め世界を救う為に自衛官は危険な任務を遂行する。話の設定は奇天烈だが、純粋に恋愛を楽しめる物語である。年の差のある恋愛。生きるために互いに暮らし始めた二人だったが、いつの間にか大切な存在になる。ここで感想を書くとベタな「つり橋理論の恋愛」のようになってしまうかもしれないが、なんだか上手いのである、書き方が。有川浩の書く恋愛は私のツボなのである。相当昔に恋愛小説に飽き、次に読み漁った推理小説に飽き、そして最近は有川浩の書く恋愛に戻ってきた。
塩に侵される街のなかでの恋
自衛隊三部作、『図書館戦争』シリーズで有名な有川浩先生のデビュー作になります。自衛隊三部作の初作品でもあり、ライトノベルからハードカバーになった異例の作品でもあります。話の舞台は『塩害』と言われる塩の被害で社会が崩壊しかかった世界の中で、陸上自衛隊の秋庭高範と小笠原真奈が暮らす日々。密やかな生活にある人物が訪れたことにより生活は激変します。そもそもこの世界の『塩害』は私達の世界の塩害とは違います。突如落下してきた塩化ナトリウムの塊を見た人間が感染し、塩になることで死に至る病として世界中に広まります。見た人間は最終的には塩の柱になり街のいたるところに残り、それを見たものもいずれ塩になってしまうというエンドレスの世界になっています。塩害が広がる世界は弱肉強食の世界となります。狩る側と狩られる側。主人公の真奈は狩られる側にいましたが、ある人物の訪れにより世界の趨勢までもが変わっていきます。この感想を読む