クジラの彼のあらすじ・作品解説
『クジラの彼』は、2007年1月に角川書店により出版された有川浩による短編小説集である。自衛隊員の恋愛を描いた6つの短編小説が収録されており、雑誌『野生時代』に不定期連載されたあとに単行本化された。 収録作品は、同作者の『海の底』のスピンオフ作品である、表題作と『有能な彼女』、『空の中』のスピンオフ作品である『ファイターパイロットの君』、トイレというユニークな視点から、航空自衛隊員と航空機メーカーの女性との恋愛模様を描いた『ロールアウト』、自衛隊員の隊舎からの脱走をテーマにした『脱柵エレジー』、失恋を繰り返す女性自衛官と、彼女ののろけ話と愚痴をいつも聞かされる男性自衛官を描いた『国防レンアイ』の盛りだくさんの6作品である。『海の底』や『空の中』を読んだことのある人はもちろん、有川浩の作品を一度も読んだことのない人でも、短編小説集であるので、彼女の独特の世界に入るきっかけとしておすすめの作品である。
クジラの彼の評価
クジラの彼の感想
有川先生お得意の「ベタ甘」ストーリーにキュンとしてしまう
あとがきで有川先生が書かれているように、ベタ甘でキュンとしてしまうラブコメ小説。自衛隊というなかなか身近にない世界がベースとなり繰り広げられる恋愛模様が斬新で興味を惹きつけられるが、切なくも胸焦がしながらの恋愛事情は自衛官も民間人も同じなんだなと親近感を覚えた。自身の友人に何人か自衛官がいてそのうちひとりがまさしくパイロットなのだけれど、「前日にどんな喧嘩をしても、翌朝は笑顔で送りだしてくれ。その日の晩に二度と帰ってこないかもしれないないのが自衛官だ」という言葉がものすごくリアルに響いた。でもこの言葉は自衛官だけに当てはまるものではない気がした。自衛官という身分は確かにこの言葉を体現する確率は高いが、人間誰しもいつ死ぬかなんて分からないのだから。
自衛隊に入りたくなる
有川浩といえば、国防やら自衛隊やらのレンアイもの、という評価がされていて、どんなものかしらと気になって読んだ『クジラの彼』。確かにこれは、正真正銘、本物の自衛隊員キュンキュンラブコメディでした。色んな恋愛ものの小説はありますが、自衛隊の人々の、本当に平和な日常を舞台にした、現実的な恋愛を書いたものって見たことない。大体が何か国を揺るがす大きな事件があってそれに関連して起きる恋愛話…だったりすると思う。でもこれは、本当にただ仕事が自衛隊なだけの普通の人間の恋愛話。しかし大人の恋愛には生活の大部分を占める『仕事』の種類は結構重要です。そういう意味で、自衛隊である人物の苦悶などが書かれてます。良くも悪くも、テレビドラマにしやすそうな内容な気がします。結果的に、ラブコメ好きな私にはたまらん本でした!
女性が女子に戻れる短篇集
有川さん得意の自衛隊モノでベタ甘の短篇集で含まれている6作品のうち3作品がスピンアウトです。私は、この本が初めての有川作品だったのですが作者が好きだと豪語する、ベタ甘胸キュンにやられてしまいました。もちろん、スピンアウトが気に入ったので本編も買ってしまいました。自衛隊という一般人には馴染みのない世界の設定ですが自衛隊の中で、こんなことが行われてるんだ、こういう意識でお仕事をしてるんだ、という自衛隊トリビアが増える本でもあります。自衛官というと堅苦しいイメージがありますがそういう人たちも、普通に悩んで胸きゅんの恋愛をするんだ、とギャップが新鮮です。女性も女子だった頃に戻れる胸がキュッとする、あの感じをもう1度、体感してみてはどうでしょう。