人の影に追われるとかげの話
ひ、とかげ「とかげ」という短編のリメイクが「ひとかげ」なんですね。私は文庫本で読んだのですが、「ひとかげ」と一緒に「とかげ」も収録されていて、随分と丁寧に扱われている作品だなという印象を受けました。大事にされている理由が本編が始まる前に書かれているのですが、私は解散したバンドの再結成、という感じはしませんでした。リメイクを試みたきっかけが数年経ってみて作品の粗だとか、矛盾だとか、若さだとかそれが目について気持ち悪い!というものではなく、今回は「とかげ」という作品により一層命を吹き込む作業のようだと思いました。昔は人の血の巡りを感じさせないような無機質的な雰囲気をもつ作品が多かったように思えます。淡々と事実を追い、抱えている問題が寝静まるのを待つ。そんな世界観でした(身体から蒸気が立ち上るほどの感情の起伏を思わせる作品もありますが、ここでは割愛)。しかし、今は人生を歩んできたひとりの人間と...この感想を読む
4.04.0
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