上質な少女漫画を読んでいるようなぜいたくさ
「蛇行する川のほとり」は、演劇部に所属する3人の女子高生が夏休みに経験するできごとを描いた物語です。恩田陸の作品には高校生がよく登場しますが、その中でもとくに美しく耽美的に描かれた作品だと思います。女の子の目から見ても美しく憧れの2人の先輩と、自然豊かな別荘で演劇のための絵を描くというシチュエーション、一昔前の少女漫画に出てきそうです。先輩たちがどんな風に美しいのか、別荘の周辺の自然がどんなに豊かなのか、そして女の子だけで過ごす合宿でちょっとした料理を作ったり夜更かししておしゃべりするのがどんなに楽しいか、そんなところまで細かに表現されており、頭の中に映像が浮かんでくる作品です。
新潮社の「六番目の小夜子」や「夜のピクニック」では、男子と女子が仲良くわちゃわちゃとしている様子が書かれており、非常に現代的な作品です。しかし「蛇行する川のほとり」では、何となく男の子の「ぶつかってきそうな感じ」が苦手だと語られており、また女の子だけで守られた世界を壊したくないという描写が出てきており、少し昔の保守的な女子高生を彷彿とさせる場面が非常に多いです。同じ高校生を主人公にした作品なのに、人物像の書き分けが見事だなと感じます。
物語自体は、ただ女の子の美しい青春を描くだけでなく悲しい結末も待っていますが、それもすべて受け止めて少女たちが大人に変わっていく様子が分かり、後味のよい作品になっていると思います。
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