言い寄るのあらすじ・作品解説
言い寄るは、1974年に文藝春秋に掲載された田辺聖子の短編恋愛小説である。後編として「私的生活」「苺をつぶしながら」と続き、約30年後の2010年に、復刻版として講談社文庫からこの3作品を、彼女の最高傑作としてまとめた短編文庫が刊行された。ある程度、年を重ねた女性に焦点を当て、心の動きを丁寧に描写しながら終始関西弁で物語を展開していく。 主人公で31歳の乃里子は、自由な一人暮らしをするフリーデザイナー。彼女は愛する対象ではないのに気が合う金持ち色男の剛と、初めての悦楽を教える中年男、趣味人の水野に言い寄られる女性であった。恋に仕事に欲しいものは手に入れてきた人生。しかし心から愛した男、五郎にだけは自分から言い寄れないもどかしさがある。好きなのに手に入らない一方で、好かれる人に言い寄られる狭間に揺られていく色恋沙汰の物語。ロマンチックに描かずどこかリアリティのある作風に引き込まれる読者の支持を得た。
言い寄るの評価
言い寄るの感想
本命にだけは言い寄れない、そんな女心。
書評が良さそうなので、初めて田辺聖子さんの本を読みました。結果、私には、そこまではまる理由が分からないというのが正直な気持ち。金持ちの男や既婚者との恋には自由奔放に、のびのびと振舞うノリコ。だけど、ずっと片思いの吾郎にだけは素直に言い寄ることができない。そういう女心や感じ方は、いつの時代も変わらないなぁと共感できるのですが古い作品なだけに、言葉遣いや時代背景・考え方が(当たり前ですが)違っていてすんなりと入り込めない感じがしました。3部作の始めなので、続けて読んでいけば慣れて面白くなるのかもしれませんが私は、今のところ次の2作品を読むかは保留中です。
女心の妙
傲慢で金持ちのボンボンと付き合い、別荘がお隣だったご主人と浮気し、自由奔放に生きている主人公。だけど、本命の本命、五郎にだけは言い寄ることができない。本当はこういうことが言いたいし、こういうことがやりたい、と頭の中では考えているのに、実行に移せない。そのものどかしさと来たら! というのが実に巧く表現されている。本当に好きな人の前では、こうなってしまうんだなぁ、女だなぁ、という感じ。その心理描写も面白いし、主人公が絵を描いたり、ものを作ったり、そういう芸術的なことを趣味としているので、その描写も読んでいて面白い。三部作の一作目らしいので、あとの二冊もぜひ読みたい。