角田光代の新しい一面を発見できた短編集
母親をキーにした短編集「マザコン」という強烈なイメージのタイトルとは裏腹に、内容はそれほどショッキングなものではない。極端な仲良し親子とか、昔のドラマ「ずっとあなたが好きだった」のようなものではなく、それでもなにかしら普通ではないものを感じるような、全体的に気持ちの悪い仕上がりとなっている。しかし読み手側にその気持ち悪さは決してマイナス要因ではなく、むしろプラスに働くと思う。もちろん、ハッピーエンドやハートウォーミングを求める読み手には向いていないとは思うけれど、暗く思いものを好む読者にはぴったりではないかと思える作品だった。そもそも角田光代の作品は、今まで読んだどれもがドラマ仕立てというか、全体的な浅い軽さがあるのは否めなかった。そのためさらりと読めるので嫌いな作家ではなかったけど、それほど好きというわけでもなかった。でもこれは、角田光代はこういう文章も書くんだと新たな発見ができたく...この感想を読む
3.53.5
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