昭和を生き抜いた二人の女性の強さと弱さの物語
二人が歩いてきた人生を振り返る角田光代さんという人は、女性同士の微妙な人間関係を書くのがとてもうまい人だと思う。『対岸の彼女』もそうだし、『森に眠る魚』もそう。どことなく危なげで、緩んだ結び目の糸みたいにはかなく脆いかと思えば、引っ張ることで強固になる。そういった人間関係をハラハラしながらも読み進めていくと、思わぬ世界が広がっている。まさにラストシーンの告白がそれである。左織と風美子…二人が歩んできた昭和を一緒に振り返りながら、二人の女性の生き様に想いをはせることの出来る物語だった。人生って奇跡のようなことはあまり起こらない。タイトルにあるように心許ない小さな舟が大海に逆らえるはずもなく、たゆたっていくだけ。そういうものだと思っていた。私も左織もどちらかというと、そっちのタイプの人間。でも風美子は笹の舟であっても、「流される」のではなく「わたる」ことを選び取ろうとする女性である。物語の...この感想を読む
3.53.5
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