ICO—霧の城のあらすじ・作品解説
『ICO霧の城』の原作は、PlayStation2のゲームソフト『ICO』である。 本作の著者である宮部みゆきがゲームに惚れこみ、自ら企画を持ち込んでノベライズされた作品で、2002年5月から『週刊現代』にて50回にわたって連載され、2004年6月に単行本化されたものである。 その昔神が闘った相手を閉じ込めたとされる霧の城。主人公イコの住む村では、その城に生贄をささげるという忌わしくも悲しい習慣を守って来たのである。そしてイコは何十年かに一度生まれるとされる、頭に角を持つニエだったのである。 13歳になり生贄になれば城の一部となり永遠の命が与えられると伝えられているが、イコは村に戻る決意をしつつ城へ向かう。そこで鳥かごに囚われた少女と出会い、イコは2人で城を脱出する決心をするのである。 そんな中、イコはつないだ手を通じて少女の過去が見えることに気付く。そして少しずつその映像が結びつき、悲しい真実が紐解かれていくのである。
ICO—霧の城の評価
ICO—霧の城の感想
小説版『ICO』視点による再読のススメ
語られていなかった主人公の出生を明かすタイトルの「ICO」がこの本を動かす男の子の名前だ。小説版『ICO』では、原作となるゲームで語られることのなかった ICO(以下イコ) の出生や環境について深く掘り下げたものとなる。恐らくこの本を手に取ったひとの大半がゲーム『ICO』をすでにプレイした、またはゲームの存在を知っているひとだったのではないかと思う。かくゆう私もそのひとりで(実際には友人のプレイを観るいわゆる観る専だが)、ゲームの世界観を楽しんでいる最中、偶然に本屋で見かけたことから手に取り読むことになった。さて、本題へうつるが、ゲームではイコの出生などについては細かい説明は一切ない。それがよりファンにとっては考察やプレイ中のワクワク感につながるのだろう。おおざっぱなことを言ってしまえば、どんな形態のどの物語でも、主人公の出生や生い立ちはなくとも楽しめるものだ。(生い立ちについては賛否あるだろうが、大雑把...この感想を読む
『二人なら、きっと大丈夫』
霧の城の中で見つけたのは、大きな鳥籠とその中にいる少女。その手を取って、言葉もろくに通じないけれど、確かに感じるのは、命のぬくもり。ゲームソフトとして最初販売された「ICO」の小説版。あの画面越しに伝わってくる二人の微かな感情の揺れが、一つ一つの文章となってよく描かれている。生贄として送り出された「イコ」と少女「ヨルダ」が城の中で経験する数々の不思議な試練。少女を守ろうとする「イコ」とその「イコ」の側にいる「ヨルダ」。少女からは言葉が一切帰ってこないけれど、その表情や身振りから「イコ」が感じ取るたくさんのもの。二人の不思議な冒険を、きっと見守っていたくなる、そんな作品。