魔術はささやくのあらすじ・作品解説
1989年12月出版された「魔術はささやく」は、数々のベストセラーを生み出しているエンターテインメント作家、宮部みゆきの作品である。宮部は、1987年にオール讀物推理小説新人賞、1989年に、本作で日本推理サスペンス大賞を受賞し、その後の活躍に続くことになるのである。本作は1990年、2011年にドラマ化されている。 なんの関係もない3人の女性の死で、物語は始まる。飛び降り、電車への飛び込み、車道への飛び出し。彼女等は、なぜ死に向かったのか。その謎に迫るのが、3人目の女性を轢いてしまったドライバーの甥の少年守である。 やがて催眠術やサブリミナルが絡んでいることが突き止められ、事件は解明されるのだが、守にとってはそれだけでは終わらない。事件を追ううちに、失踪した父親の真実にも迫ることになり、彼自身が究極の選択を迫られることになる。ひとつの小説の中に、いくつもの物語が折り重なるような、練りに練った構成が、宮部みゆき作品の醍醐味である。
魔術はささやくの評価
魔術はささやくの感想
エキセントリックな一冊
以前に2時間ドラマをTVで見ました。原作とはずいぶんと違い、本で読んだ方がずっと面白いです!鍵となるのは催眠術による殺人やサブリミナル広告等で、スピード感あふれる勢いのある展開に引き込まれました。なりより、宮部さんの描く少年がいい!守君、まっすぐ育ってとても賢い子です。そして高校生と思えないほど大人っぽい。ストーリーの中での、成長がすごいです。これからどんどんかっこいい男になっていくと思います。20年前の作品ながら色褪せてないのがすばらしい。最後まで興味深く読めました。他の宮部作品も是非読んでみたいです。時代小説もいいかなあと思ったり。
初期作品の一つ
過去に宮部みゆきにはまってことがあり、その時に読んだ作品の一つです。魔術という言葉が入って入るが、実際には催眠術やサブリミナルがキーとなります。話の展開は予想外でしたが、すごく面白いと言える作品ではないと思います。あらすじからすると少しその後の展開が弱いように感じました。あまり納得できるトリックじゃないですしね。主人公は心の成長が見られて好感が持てました。どっちかと言うとトリックより人や心理描写に主眼を当てて読むと楽しめると思います。宮部みゆきの初期の作品なのでまだ粗があるように感じますが、一通りの作品を読むつもりならおさえておくと良いと思います。
平凡な事件の影に潜むもの
親と複雑な事情と病気で切り離され、孤独な身の上にはなったものの、それなりに善良な親戚に引き取られた高校生が主人公となります。複雑な家庭な事情がありつつも、平穏な日常生活を送っていた主人公でしたが、身内が起こした交通事故から、その背後に潜む様々な事件と関わることになります。平凡などこにでもある事件のように見えて、探っていく周到に練られた犯罪と判明していきます。今では押しも押されぬベストセラー作家となった宮部さんの作品だけあって、ストーリーテリングは巧みです。ただ他の宮部さんの作品と同じように、人物設定や犯罪の動機などもそこまで極端で極悪といったものではありません。明らかになる犯行のやり方については、多少超自然的であって不満は残りますが全体としてはそれなりに面白いミステリです。