変身のあらすじ・作品解説
変身はチェコ出身の作家フランツ・カフカによって書かれた短編小説である。カフカの作品の中ではもっともよく知られているものの一つ。 主人公は布地の販売をしているグレーゴル・ザムザ。彼は今の仕事は決して好きではないが、両親の借金を返済するために不満を抱きながら続けている。それまでは何も前兆がないのだが、ある朝目が覚めると彼は自分が虫になってしまっていることに気づく。変わり果てた姿になってしまった自分と周囲の反応が、ザムザの視点を交えながら細かく描写されていく。 カフカの作品は不安と孤独、そして不条理な世界がしばしば登場する。作品には理由なく不当な扱い、あるいは不幸な体験をする主人公がいて、小説ではそうした主人公の奇妙な体験が語られる。今作も同様で、自分が虫になってしまったという前提も異様だが、それにもましてザムザの感情、周囲の反応は理解できる範疇ではあるものの、一般的な感覚を超えた独特な世界を作り上げている。
変身の評価
変身の感想
実際にこんなことあったら嫌だなー。。
脳移植は、数少ないが日本でも実際に行われている事で、その脳移植が元でこのお話の主人公ジュンイチは、どんどん変わっていってしまう。というストーリーですが、読んでいて、ジュンイチが嗜好や趣味、考え方などがどんどん変わっていく姿に、読んでいて怖くなりました。 別の自分になっていく。脳は自分の感情などもコントロールしてる部分だから、いや・・実際にありえるかもしれない。と思ってしまいました。そしてそんな変わって行くジュンイチを最後まで献身的に支え、見守っている恵の姿は、もう可愛そうで仕方ありませんでした。そしてジュンイチも。 結末も、救われない形で終わってしまします。。最後までとにかく切なかったです。
孤高の天才
この中編小説は主人公が引き籠り段々と異形のものに姿を変えてゆく話である。家族は主人公を無視したらめ、彼は一層人を信じきれなくなった。というか、元来彼は孤独なのである。その孤独がたまたま強まって最初は少しの間だけ静養しようとしたのだろう。しかし社会の荒波に揉まれ自信を異星人と感じ始めた主人公は次第に怪物へと変貌してゆく。そして、そのまま彼は死んでしまったのである。この作品を気持ち悪いという人がいるが決してそんなことはない。非凡から天才に至るまでの人々は常に思惟を繰り返し、自分の世界に閉じこもっているのである。だが、一旦彼らが外気に触れると体が蒸発してしまう。誰も自分の努力、功績を認めてくれない。誰も自分を愛してくれない。それらを包含したのが「変身」なのである。
奇妙
朝起きたら芋虫になっていたという、グロテスクな超展開から始まります。そこに対する意味付けや理由付けを行わず物語が進むというのは、当時のシュールやナンセンス小説の流れをくんでいるのでしょうが、それを含めてとてもモヤモヤさせられつつ、逆にそれが話しの奇妙さを引き立たせて物語に引き込んでいきます。そして、醜い芋虫に変身したグレゴール・ザムザを取り巻く環境や、心理的描写に社会的に圧迫されていく人間の心理がえげつないほどに痛感ささせられます。元祖引きこもり作品とも言えると思いますが、現代のひきこもりの心理と通じるものもあり、社会の病理というものを考えさせられる作品です。