白痴のあらすじ・作品解説
「白痴」は、1868年に発刊されたドストエフスキーの長編小説である。 日本語訳としては、新潮文庫から上下巻、岩波文庫から上下巻、河出文庫から全3巻が刊行されている。 主人公のムイシュキン公爵は、幼いころから重度のてんかんで知能は劣っているが、無類の善人であり、そんな彼が当時の帝政ロシア社会で巻き起こす波乱の人生模様を描いた作品となっている。 日本では、1951年に黒沢明監督が映画化しており、大女優の原節子がヒロインのナスターシャ役を演じている。(ただし、この映画は、北海道を舞台にして、登場人物も日本人という設定になっている。) また、ロシア文学者の江川卓氏は、1994年に新潮選書から、この作品の"謎解き解説本"を刊行している。 「罪と罰」、「悪霊」、「未成年」、「カラマーゾフの兄弟」とともに、ドストエフスキーの後期五大長編作品と呼ばれており、「戦争と平和」や「アンナ・カレーニナ」で有名なロシアの文豪トルストイも絶賛した作品である。
白痴の評価
白痴の感想
戦時下に生きる男と白痴の女
グダグダと始まる物語です。キチガイの男に、輪をかけて騒々しいその母親、そして会話もろくに成立しない白痴の妻。伊沢は家に逃げ込んできた白痴の女を匿うことになりますが、就寝のシーンが何かおかしいです。女がすぐに布団から出てしまうのを、伊沢は自分に何かされると怯えているのだろうと思っていますが、女は伊沢が体に触れないために、自分を嫌っているからと言うのです。何だかかみ合いません。そんなグダグダ感も空襲のシーンになるとぐっと緊張感が増します。布団をかぶって2人で逃げるのですが、空襲後に疲れて眠ってしまった女を捨てていってもいいのにと葛藤する伊沢。普通の恋愛小説とは一線を画する、分かったような、分からないような、不思議な小説です。