きらきらひかるのあらすじ・作品解説
「きらきらひかる」は1991年に新潮社にて発表された江國香織による長編小説で、江國は本作で第二回紫式部文学賞を受賞している。またこれを原作とした映画が1992年に公開されている。 アルコール依存症の笑子と同性愛者である睦月が夫婦であり、そこに睦月の恋人の紺が入り込んだ奇妙な三角関係が描かれている。親のすすめで精神科医である睦月とお見合いをした笑子だが、二人は共に自身の抱えている秘密を告白した上で結婚を決める。結婚はしても、睦月が同性愛者でるため二人の間に子供が生まれることはなく、次第に周囲の期待に追い詰められる笑子だが、睦月と紺の仲を裂くことはせず、むしろ紺とは友情に近い関係性すら築いてしまう。夫婦の形とは、男と女とは。 映画版キャストは、笑子を薬師丸ひろ子、睦月を豊川悦司、紺を筒井道隆が演じ、現代日本でもとりわけ話題になるLGBT問題の先駆けとも言える作品であったため、内容の話題性も影響してか、1992年度のキネマ旬報ベストテン第10位に選ばれている。
きらきらひかるの評価
きらきらひかるの感想
みんな良い人?なのかな
ひどく情緒不安定なアル中患者、笑子と、医師で同性愛者で恋人ありの睦月。2人は肉体関係はないけれど、戸籍上は夫婦。睦月の恋人の紺くんに遠慮しつつ、2人はお互いを大切に思い合っている…不思議な三角関係。物語は、笑子と睦月の一人語りが交互に重なり、続いていく。睦月の設定が、あまりにも綺麗すぎて、納得いかなかったけど、人間臭い所もたまに見受けられ、ちょっと安心する場面もあった。笑子も、紺くんに対してちょっとだけ意地悪している所が、可愛いストレス発散に見えた。この3人がどうなってしまうのか、何も変わらないのか、変わるのか、が謎で、面白いと思いました。とても読みやすい綺麗な文章で、わりと短時間で読み切る事が出来ます。深読みすると、皆、いい人なのではなく、自分の信念の為、自分自身の為に、いい人を演じているのでは?と思うと、ちょっと怖い話だと思いました。綺麗な話なので、一層そう思うのかも。この感想を読む
不思議な三角関係
この頃は江國香織さんの小説が好きで、色々読みましたが、これと、「つめたいよるに」のデューク以外に、あまり内容を覚えていません。恐らく読んだ瞬間に目に浮かぶ浮世離れした雰囲気を味わうだけのような、そんな感じで読んでいたのだと思います。アルコール依存症で情緒不安定な笑子と、ホモセクシャルの夫睦月、睦月の恋人の紺が繰り広げる、不思議で素敵な三角関係が描かれています。とても静かで、美しい小さな世界がそこにあるような感じを抱かせる小説です。ホモセクシャルだけど笑子を大切にしている睦月はとてもいい。私の好きなシーンは、笑子が睦月のシーツに毎晩アイロンをかけるところです。
初めて読んだ江國香織さんの作品
江國さんの書いたもので初めて読んだ作品です。彼女の文章は繊細で透明感があり、サラサラと読むことができ、なんとなく心地良い気持ちにしてくれます。初めて読んでから10年以上たちますが、何度も何度も読んでしまうお気に入りの小説の1つです。アル中で情緒不安定な妻、ホモの夫、その恋人。全てを承諾して結婚した2人のあやうい「水のような」関係が描かれており、ふわふわしたきれいな気持ちになったり、どうしようもないくらい切なくなったりする純愛小説です。ストーリーが頭に残るというよりも、キレイな雰囲気がずーっと心に残ります。私にとっては音楽のような感じです。じっくりというよりも、お酒でも飲んで、ほろ酔い気分で読むのがよろしいかと思います。