地獄変のあらすじ・作品解説
地獄変は、1918年「大阪日日新聞」に連載された芥川龍之介による短編小説である。 この作品は、娘を犠牲にしてまで作品を完成させた絵師の壮絶な芸術欲を描いた小説である。絵師としては高名だが強欲・横柄・高慢な事から人々に嫌われていた良秀が、ある日堀川の大殿から地獄を題材にした屏風を描くよう命じられた。寵愛する娘を小女房として大殿の御邸に上げさせられていた事に不満を持っていた良秀だったが、屏風を完成させるため部屋にこもり仕事に集中する。しかしそれは弟子を呼びつけて裸にして鎖で縛り上げたり、ミミズクに襲わせたりしてその姿を描くという常軌を逸した方法だった。そして車に乗った女性が猛火の中で悶え苦しむ図柄が描けず完成しないため大殿にそれを見せて欲しいと願い出ると、大殿はそれを承知する。洛外の御所でそれは行われたが、車の中には良秀の娘が鎖にかけられており、良秀の目の前で火が付けられた。一ヶ月後、屏風は完成したが良秀は部屋でくびれ死ぬ。 芥川自身の芸術至上主義と絡めて論じられる事が多い作品である。
地獄変の評価
地獄変の感想
芸術を追求した狂気
本作は芥川の代表的な作品ではありますが、芸道を追求する男と俗世間の感覚のズレとそこから物語のモチーフに結実した狂気めいたものが、永遠に読者に突きつけるものを感じさせます。絵仏師の主人公はモデルとするものを見て仕上げるのが常であったのですが、「地獄」をテーマとした屏風を描くことを命じられ、それにまつわって自分の愛娘が関わってきます。芸術を追求する上で、完璧を望むあまり狂ったような行為にまで手を染める芸術家は現代にもよくあります。また自分の作品の完成を家族や自らの平和や幸福を投げ打ってまで目指すのも時折ある話です。しかし本作ほどに物語として凄まじい形でそれを昇華させた一作はなかなかに見当たらないでしょう。
地獄変の登場キャラクター
堀川の大殿様
よみがな:ほりかわのおおとのさま 性別:男 国籍:日本 性格:大腹中の御器量 特徴:下々の事まで御考えになる、云わば天下と共に楽しむ 物語上での目的:絵師根性の曲なのを懲らす御心算 邸宅の規模:壮大、豪放 語り草になるような行い:橋柱に御寵愛の童を立てた、大饗の引出物に白馬ばかりを三十頭、賜った 邸で...