著者自ら一押しの短編集
著者自らが賞賛する作品たち「他殺の効用」には、タイトルとなっている他殺の効用を含めた5つの短編が収録されている。他殺の効用は日本推理作家協会賞にノミネートされた作品ともあり、著者の内田氏自身びっくりと同時に読み返すと自身も納得の面白さであるようで、あとがきではこの作品も含め自身の作品の面白さが解説されている。日本人は、人に贈答をする際に「つまらないものですが」と言ったり、そもそも品物を粗品と言ったり、家族のことを愚妻だ愚息だの、へりくだった言い方をすることが多く、謙遜の美学みたいなものがある。それでも最近では、つまらないものならよこすなという意見や、家族を愚妻などと言ったら、妻の権利意識が上昇している時代、へりくだりすぎてかえって無礼になりかねないという方向になってきている。しかし、それでも謙遜の美学は完全に失われたわけではない。そういう文化で育った日本人には、内田氏のように自分の作品を...この感想を読む
5.05.0
PICKUP