困難に向かい合ったとき、もうだめだ、と思ったとき、想像してみるといい。三時間後の君、涙がとまっている。二十四時間後の君、涙は乾いている。二日後の君、顔を上げている。三日後の君、歩き出している。
今川篤朗
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日常的すぎてあいまいになる言葉を使わなくなっていく自分に気づく。仕事をして、家に帰ってご飯を食べて、夫と雑談していると「あれってさ」とか「って感じ」などと言ってちゃんと言葉にしないまま、ぎゅっと言葉を丸めてしまう。それを繰り返していくうちに日常で使う言葉は限られて、それ以外の言葉は思いつかなくなってくる。すると、何故だか人の話も聞けなくなる。自分に向けられているはずの言葉が耳を通り過ぎて、まるでラジオを聴き流しているようだ。この本は、そんな愚かなわたしに気づかせてくれる本だった。ましてやスピーチなんて、もっとも聞き流してしまうものの一つで、どのスピーチもTPOに合わせた常套句があって、インターネットで検索できるような例文の枠組からはみ出していないから面白味もないと思っていた。でも、この本を読んだ後はスピーチこそ日本語の美しさを、言葉の持つ意味を最大限に生かすツールなのだと感じた。言葉が持つ...この感想を読む
普通のOL、二宮こと葉が幼馴染の結婚式で、スピーチライターの久遠久美と出会い、スピーチライターを目指して奮闘するストーリー。スピーチライターとはなかなか聞きなれない職業でしたが、ストーリーの随所で出てくるスピーチがどれもすばらしく、言葉とは人を幸福にもし、もっと大きなもの世界をも動かす力があることを感じました。本文より「困難に向かい合ったとき、もうだめだ、と思ったとき、そう想像してみるといい。三時間後の君、涙がとまっている。二十四時間後の君、涙は乾いている。二日後の君、顔を上げている。三日後の君、歩きだしている。どうだい?そんなに難しいことじゃないだろ?だって人間はそういうふうにできているんだ。とまらない涙はない。乾かない涙もない。顔は下ばかり向いているわけにもいかない。歩き出すために足があるんだよ。」心に深く入りました。
今川篤朗
主人公の師匠が15歳の時に両親を亡くし、その時にかけられた言葉
久遠久美
主人公が結婚式の披露宴で聞いた伝説のコピーライター久遠久美のスピーチ
久遠久美
こと葉が言葉の力に魅了されるきっかけになった、今川篤志の結婚式で久遠久美が披露したスピーチの中で使われた言葉。物語の最後には同じ言葉がこと葉にも贈られた。