言葉の使い方ひとつで、日常は変わる - 本日は、お日柄もよくの感想

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本日は、お日柄もよく

4.754.75
文章力
5.00
ストーリー
4.50
キャラクター
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設定
4.50
演出
4.50
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言葉の使い方ひとつで、日常は変わる

4.54.5
文章力
5.0
ストーリー
4.0
キャラクター
4.0
設定
4.0
演出
4.0

目次

日常的すぎてあいまいになる

言葉を使わなくなっていく自分に気づく。仕事をして、家に帰ってご飯を食べて、夫と雑談していると「あれってさ」とか「って感じ」などと言ってちゃんと言葉にしないまま、ぎゅっと言葉を丸めてしまう。それを繰り返していくうちに日常で使う言葉は限られて、それ以外の言葉は思いつかなくなってくる。すると、何故だか人の話も聞けなくなる。自分に向けられているはずの言葉が耳を通り過ぎて、まるでラジオを聴き流しているようだ。

この本は、そんな愚かなわたしに気づかせてくれる本だった。ましてやスピーチなんて、もっとも聞き流してしまうものの一つで、どのスピーチもTPOに合わせた常套句があって、インターネットで検索できるような例文の枠組からはみ出していないから面白味もないと思っていた。でも、この本を読んだ後はスピーチこそ日本語の美しさを、言葉の持つ意味を最大限に生かすツールなのだと感じた。

言葉が持つ力について考える

この本の主題はスピーチの持つ言葉の威力だ。スピーチというもので覚えているのは昔、中学生の頃に英語の教科書で習ったマーティン・ルーサー・キング・ジュニアの「I have a Dream」という人種平等を呼びかけたあのスピーチくらい。あれは「I have a Dream」というフレーズを絶叫するように繰り返していたのが印象的だった。文章にするとそのスピーチの迫力は多少薄れてしまうはずなのだけど、この本のすごいところは文章なのにスピーチが素晴らしいと思えるところにあって、特に文中のこと葉のスピーチに心を鷲掴みにされてしまう。ありきたりな言葉に特別な思いをのせただけでこんなにもフレーズの印象が変わる、出だしを変えただけでちゃんと聞きたいと思えるスピーチになる、思いを伝えるためには言葉は不可欠なのだと改めて思い知らされた。

じんわりと思い出す一冊

「本日は、お日柄もよく、心温かな人々に見守られ、ふたつの人生をひとつに重ねて、いまからふたりで歩んでいってください。たったひとつの、よきもののために。」

読み終わった後も心にじんわりと残る言葉だ。原田マハさんの著作は個人的に当たり外れが大きいと思っているのだけれど、この本は読み終わった後、もう一度読み返したくなるほど素敵な一冊だった。何気ない一言で傷つくのならば、何気ない一言で相手を救えもするのかもしれない、ちゃんと聞くことができれば、相手のふとした言葉を聞いて、その言葉の裏側を理解できるのかもしれないと思えた。もし今後スピーチをする機会があるのならば、スピーチの極意十箇条を思い出して、伝えてみたい。

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