恋愛ドラマや恋愛映画にうんざりしている人に
他人の家の木に、恋をする「さまざまな愛にまつわる短編が11編つまっている」という言葉の清らかさとは裏腹に、この本の内容は本当に偏っていて、かなりグロテスクで吐き気がしそうなものも多く「これって愛なの?」と疑問に思ってしまうような短編もありました。でも、そのなかでわたしが好きだったのは冒頭にあるアリ・スミス作の「五月」で、この話は他人の家の木に本気で恋をする女性とその旦那さんの愛を2人の視点から語っています。家のなかにその木を移植しようとフローリングをはがしにかかったり、食事の支度以外はずっとその木を見続ける時間に費やしたりとその女性の木に対する愛はわかりやすいほどに常軌を逸しています。その異常さにどうしても不幸にならざるを得ないというか、あまり良くないラストを感じてしまっていたのですがこの話のラストは素晴らしかった。どうしようもない、理解もできない状況のなかでレイ・ヴクサヴィッチ作の「僕ら...この感想を読む
3.53.5
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