人間の憎悪は消えますか?私が一番おそれていたのは…憎しみを持ってしまった、自分自身なんです。
ゲジヒト
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『PLUTO』は、2003年から2009年にかけて『ビックコミックオリジナル』で連載された浦沢直樹による漫画作品で、全8巻が刊行されている。この作品は、手塚治虫の漫画作品『鉄腕アトム』の「地上最大のロボット」の回を原作にしている。2005年には第9回手塚治虫文化賞マンガ大賞と、第9回文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞を、2010年には第41回星雲賞コミック部門を受賞した。累計発行部数は、850万部を突破してる人気作品である。 この作品は、『鉄腕アトム』の「地上最大のロボット」の完全なリメイクではなく、物語の根幹部分はそのままだが、その他の部分には浦沢直樹のアレンジがふんだんに加えられている。そのため、原作の主人公はアトムだったのに対して、今作では世界最高水準のロボットの一人であるユーロポール特別捜査官のゲジヒトが主人公を務めている。物語は、世界最高水準のロボット破壊事件を捜査するゲジヒトの視点を中心に進行していく。
手塚治作品を踏まえた新たな名作手塚治虫の代表的な作品である「鉄腕アトム」からのオマージュとして制作されたマンガだけれど、全くのリメイクでなく、浦沢直樹ならではのキャラクターとしてが新たに蘇った作品だと思う。個人的には「ブラック・ジャック」や「ブッダ」ほど読み込んでいない作品のため話がどれくらい似ているのかということはほとんどわからないのだけど、十分に楽しめた。またキャラクターの違いも面白い。もちろんアトムやウランばかりでなく、手塚治虫には完全なロボット然として書かれていたゲジヒトは、浦沢直樹には疲れた中年の刑事として描かれ、話が進むまでロボットということさえわからないくらいだった。“プルートゥ”に破壊される計画に含まれていた7人のロボットの多くが一見ロボットとわからないという展開がいかにもサスペンス風のおもしろさをプラスし、ストーリーから目が離せなかった。浦沢直樹の絵柄と合致したストー...この感想を読む
相変わらず良くわからないのに引きが上手い!浦沢直樹の作るお話の構造は複雑で、裏に裏があって読んでるうちに整理がつかなくなる。なのに面白いのはいいところを突く要素があるからであって、ゲジヒトがゼロニウムを使った過去が蘇ったり、アトムが人類全部の人格をインストールして眠ったり、天馬博士が突然現れたり、などなど、これからどうなるんだろうという展開の広がりが素敵で読んでいってしまう。ゲジヒトが主人公のままで良かったのに、と思うけれど(浦沢直樹らしい頭脳派のクールな仕事人だ)、寝ぐせの付いたアトムの可愛らしすぎるキャラリメイクには、ときめきを覚えた。ロボットと人間=?ロボット的人間と、人間らしい人間に、この世の人は分けることができる。読者が薄々気づいているのは、現実世界のロボット的人間の存在という比喩であり、その魅力あるキャラとの共存というあり方のちょっときつい比喩である。また、表情豊かなウラン...この感想を読む
よみがな:げじひと 年齢(作品時):30代後半 性別:男性 国籍:ドイツ 住まい:ドイツのデュッセルドルフ 所属:ユーロポール特別捜査官 特徴:人間型ロボット。7体の世界最高水準のロボットのうちの一人 特技:左手は睡眠ガスを噴射できる銃器、右手はSAAW特殊火器“ゼロニウム弾"の射撃が可能 物語上での目的:正体...
よみがな:もんぶらん ニックネーム:モンブラン 性別:ロボットのためなし 国籍:スイス 住まい:スイス 所属:スイス林野庁 性格:詩や歌を愛す温厚な性格 特徴:7体のロボットの内唯一、見た目は原作のそれとあまり変わらない 特技:アルプスの山岳ガイドや遭難者の救助も務める 物語上での目的:一連の事件による最...
ゲジヒト
ゲジヒトはユーロポール特別捜査官ロボットとして数々の難事件を解決するが、その高性能さゆえに憎しみという感情を抱いてしまい、ある男を殺してしまう。 記憶は消去されたが、後に自らが殺した男の弟・アドルフを守る任務につくことで消された記憶が蘇ってしまう。自分の中に芽生えてしまった憎悪という感情に戸惑いながら、アドルフの警護を続けるロボット・ゲジヒトが人間に問いかけた悲しい名言。
天馬博士
科学省を去ることになった天馬博士が後任のお茶の水博士に放った一言。 アトムは失敗作、挫折や人を殺すほどの強い憎悪が電子知能を育てると言う天馬博士。お茶の水博士は当然「あなたは間違っている」と反論しますが、天馬博士は間違う頭脳こそが完璧なのだとこの言葉を残し去っていきます。 完璧な人工知能は悩み、苦しみ、間違いを犯す…すなわち人間はそれを乗り越えて生きていかねばならないのだと思い知らされる言葉です。